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呪われし大地⑭

「落ち着いて聞いてください。」


 音を立てずに静かに療養院に入り、破傷風菌に感染した弓兵の耳元で小夜が(ささや)いた。彼の手を優しく握りながら。


「あなたは今、土の毒に侵されています。この毒に侵されると、体がこわばり、大きな音に反応して体が大きくけいれんします。」


 小夜が握っている手が細かく震え始めたのは、けいれんではなく恐怖によるものだろうと想像に容易(たやす)かった。それを(かんが)みつつ優しい声で続けた。


「この病気は14日くらいで自然に良くなります。ただしあなたの体がけいれんで壊れてしまわないように、今からあなたの物を見る力と、音を聞く力、そしてこの左手以外の触れた感覚を封印します。」


「大丈夫、あなたのそばには必ず誰かがいます。そして握られた手にその存在を感じられます。」


 しばらく沈黙が続き、病魔に侵された弓兵は深く頷いた。


「大丈夫、あなたはきっと大丈夫。」


 ヴィルヘルムに視線を向け合図を送る小夜、それを合図にヴィルヘルムはまず弓兵の両耳に手を当て、その『治療術』を以って聴覚を遮断した。突然聴覚を失った弓兵が小夜の手を握る力が強くなる。その不安を察して小夜はその弱々しく震える手を優しく握り返した。しばらくして震えは止まった。続いて視覚、左手以外の体表感覚を奪われた兵士は震えが収まっていた。外界からの感覚がほぼ奪われた弓兵は再び眠りについた。左手から伝わる温かみと安心を感じながら。


「大丈夫、あなたはきっと大丈夫。」


 聴覚を遮断された兵士に小夜は語り続けた。そしてその兵士も夢の中で小夜の言葉を反芻(はんすう)し続けていた。


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