表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/134

呪われし大地⑪

 先ほどからいびつに顔を歪めている兵士、彼は七日ほど前に行われた遠征での唯一の負傷者、完全勝利の歓喜につい作戦司令官の前で膝を擦りむいた弓兵だった。以前小夜が行った戦闘外傷救護講習にて、擦過傷などはしっかりと水洗いし、必要なら療養院で高濃度アルコールによる消毒をするようにとの通達が全兵士になされているはずだった。しかし歓喜の凱旋に(うつつ)を抜かしたこの弓兵はそれを怠り、布を巻いて血止めをした後にすぐに喜びの酒宴に興じ始めてしまった。


 彼は遠征から五日ほどして寝汗を大量にかくようになり、その後酒宴に参加してもうまくものが呑み込めなくなっていた。そしてとうとう顎がこわばり、口が開かなくなってしまった。顔面までこわばって、あちこちが引きつり、もう言葉も発するのも困難になってきたため慌てて仲間に連れ添われこの療養院に訪れた。この話は話すことができない弓兵の付き添いからヴェルナーに伝えられた。


 


 このとき小夜はテオドールと共に消毒用高濃度アルコールを蒸留するため、領主の許可を得て使わせてもらっていた火酒の蒸留所へ出かけており不在だった。ヴェルナーは自分一人しかいないのでとりあえず顔面のけいれんを繰り返す弓兵を療養院で預かった。ヴェルナーはちょっと困っていた。実はここ数日の馬鹿騒ぎの日々と違い、今朝は朝から忙しかった。早朝に兵舎で転倒した兵士が派手に頭から出血し、小夜とヴィルヘルムはその対応に追われた。受傷現場の兵舎にて創部の消毒を終えた後、ヴィルヘルムにあとの施術を任せた小夜は、テオドールを連れ立って足りなくなりそうな消毒用高濃度アルコールの蒸留に向かった。結果ヴェルナーは一人療養院の留守を任されていた。ヴェルナーはエルフェリンに招き入れられた顔面のけいれんを繰り返す兵士をベッドに寝かせた。日の当たらない静かなベッドに寝かされた彼は、そのけいれんが心なしか収まり、いつしか寝息を立て始めた。その姿にヴェルナーは安心し、小夜とヴィルヘルムの帰りを待つことにした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ