呪われし大地⑨
完全勝利を得て一人も欠けずに戦場から帰還した英雄的兵士たちを迎え、城塞都市オストプロシアは文字通り歓喜で溢れた。
「導師、大勝利です。これもすべて貴女のおかげです。」
呼ばれてもいないのに、『爆炎術師』ゲオルグはその体躯を療養院に滑り込ませていた。あまつさえゲオルグは小夜を、
「導師」
と呼び、呆気にとられた顔をした小夜に近づこうとしたとき、
「大勝利おめでとうございます。ゲオルグ殿、それで私の導師になにか御用でしょうか?」
とヴィルヘルムが当然のように割って入った。
「大体どうしてここに来たのです。まずは兵舎に戻り戦果を報告せねば、我々に報告するのは怪我人の状態だけで結構です。」
言葉に精一杯の嫌味を込めるヴィルヘルム、それを鉄面皮の笑顔で弾き返したゲオルグは高らかに言い放った。
「今回の遠征にて死者は0、怪我人もおりません。」
これを聞いてさすがの小夜も驚いた。これまで絶望的な戦いだと聞いていたのに、まさかここまでの完全な大勝利とは、小夜にも思いがけず笑みが零れた。ヴィルヘルムも、
「猪頭鬼に齧られたゲオルグ殿に『治療術』を用いる手間が省けました。」
と皮肉を述べつつもその顔は犠牲者無しの喜びに上気していた。そしてこのやり取りを見つめていたヴェルナーとテオドール、この状況を見逃す二人ではなかった。
「城塞都市オストプロシアばんざーい。」
と叫びながら、人数分のビールジョッキを持ってきた。そしていつも通りの宴会が始まった。




