呪われし大地⑦
ゲオルグの爆炎に誘い出された猪頭鬼たちは何の策もなくただ突進してきた。その体躯と牙、そして爪が彼らの武器である。しかしそれだけで充分に恐ろしい相手だった。そうこれまでは。木柵の防壁と槍を構えた兵士たち、その後ろから無数の矢が飛び、そして石礫が風を切った。これらは頑強な猪頭鬼たちに単発で致命傷を与えるものではなかったが、その進軍スピードを下げるには充分だった。無数に飛んでくる飛び道具に猪頭鬼たちのスピードは削られ、先陣を切った猪頭鬼たちの進みが遅くなれば後続のものたちも前が詰まって走れなくなる。結果より多くの飛び道具を食らうことになった猪頭鬼たち、木柵の手前で絶命するものも少なからず存在した。そして一撃ごとに時間を要するものの、ゲオルグたち『爆炎術師』の業が、猪頭鬼たちの肉体を焼き、骨を砕く。小夜の後送システムに端を発した兵士たちが得た安心、重傷を負っても必ず連れて帰ってもらえる。その安心はその布陣をより強固なものとし、さらには後方部隊からの遠隔攻撃もより強力なものとしていた。最前線の兵士たちが驚くほどに、木柵まで辿り着いた猪頭鬼はみな息も絶え絶え、簡単に兵士たちの槍に倒れその屍を重ねることになった。人間たちに一太刀も浴びせることなく、猪頭鬼たちは死んでいった。
人類にとって今まで恐怖の対象でしかなかった猪頭鬼たち、その大半が木柵に辿り着くこともできず、次々と飛び道具に倒れ、木柵に辿り着いた猪頭鬼も多方向からの槍による刺突を受けて絶命する。ゲオルグの『爆炎術』に始まった戦闘は、夏の日照りによるゲオルグの影がその長さを変化させる間もなく終了した。城門から猪頭鬼は出てこなくなり、まさに死屍累々、猪頭鬼の死体だけが城塞都市ケルニヒベルグの城門前を埋め尽くしていた。あまりの戦果に歓声を上げる兵士たち、長きにわたる猪頭鬼たちとの戦いにおいて、今回の戦闘での死者は初めて0を記録した。




