呪われし大地⑥
いよいよもって城塞都市ケルニヒベルグ攻略が始まろうとしていた。兵士の士気は高く、そしてその練度も高まっていた。これは兵士の生還率が上がったことにより戦闘経験を積んだ兵士が増え、歴戦の勇士がその数を増やし、結果全体の練度を押し上げていた。城塞都市ケルニヒベルグはオストプロシアの倍近い面積を誇り、その城壁もオストプロシアより頑健に作られていた。攻城戦は城を守る側が有利なのは兵法の基本である。それが人間相手の戦いであればだ。猪頭鬼たちは城塞都市ケルニヒベルグに詰めかけた人間を見て、怒りも似た敵愾心を燃やし、彼らの本能行動とも言うべき殺戮、蹂躙を存分に行い、さらにはその食欲を満たすべく城門を出て戦うだろう。だから人間側に攻城戦の不利はなかった。
木柵が城塞都市ケルニヒベルグ城門に向かって一列に並べられた。猪突猛進を絵に書いた様に目の前の相手に突進してくる猪頭鬼相手に複雑な陣形は不要だ。後はいつも通り、子供が蜂の巣を棒でつつくが如く、敵の集落を攻撃してやればよい。さすれば怒りに燃えた蜂が飛び出してくるが如く、猪頭鬼たちが群れを成して飛び出してくるであろう。
木柵を前に置き、その後ろには身長の倍もあるような槍を抱えた兵士たちが列を成して大挙している。そしてその後ろには弓兵たちが今か今かと矢をつがえようとしている。準備は整った。本日の作戦司令官が『爆炎術師』ゲオルグに合図をする、ゲオルグは頷いてからその巨体を木柵手前に運んだ。そして彼の攻撃範囲ギリギリのところ、城塞都市ケルニヒベルグの城門前に彼が見つけた、彼ら『爆炎術師』にしか見ることの出来ない燃素溜まり。それにゲオルグが祝詞とともに『術』の力を込める。その力が臨界を越えた時、燃素は爆炎に変わる。
ドゥン
鈍い音を立てながらゲオルグの『爆炎術』が炸裂した。彼もまた若くして天才『術師』と称されてはいるが、その彼の力を以ても城塞都市ケルニヒベルグの城壁が砕かれるわけではない。その代わり蜂の巣のそばで爆竹を爆ぜさせることと同じ効果を生み、蜂のように怒り狂った猪頭鬼たちが大挙して現れた。城塞都市ケルニヒベルグの攻城戦、その火蓋が今まさに切って落とされた。




