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訓練場での事故①

 小夜が行った城外戦闘時の外傷救護講習の内容が兵士たちに浸透し始めたころ、療養院には小夜の教えを乞う『治療術師』がぽつぽつと現れるようになっていた。彼らヴィルヘルム以外の『治療術師』たちも以前は負傷兵たちを救いたいという熱意を持って勤務していた。しかしあまりの治療成績の悪さに彼らは絶望し、治療がおざなりになっていた。しかし城塞都市オストプロシア中の噂となっている、療育院の天使と天才『治療術師』の話は希望を失っていた『治療術師』たちの耳にも入り、結果彼らは希望を取り戻すべく、小夜の知識を学ぶために療養院を訪れるようになってきた。療養院にヴィルヘルムを伴いやってきた諦めの早い老年『治療術師』や、態度が大きいわりにヴィルヘルムに説諭(せつゆ)された中年『治療術師』もばつが悪そうにその様子を覗きに来ていた。そして感染の恐ろしさを理解し、彼らは今まで誇りに思っていた血に汚れたローブを脱ぎ捨て、白亜のシーツから作ったローブを羽織り、治療時は同色のマスクをつけるようになっていた。もちろん血に汚れたローブが不潔であることは『治療術師』は理解していたが、伝統と誇りを重んじるあまりそのまま使用していた。

 ただ彼らに古いローブを脱がさせたもう一つの原因、それは気温だった。小夜が来たばかりの頃は春めいた気温であったが、徐々に太陽の南中高度が上がり、それに伴い気温も上がっていった。気温が上がってくると重いローブは暑いし、なによりも異臭を放った。おかげで『治療術師』たちは清潔さを増し、それが感染予防効果を高めていた。それを眺めながら、小夜は少なからず自分の影響で感染対策が進むのを嬉しく思うのと同時に、この世界にも四季があることを実感していた。しかし上がった気温は良いことばかりを生むわけではなく、不幸な事故を招いたのは、ある昼下がりの訓練場でのことだった。

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