閑話②
エルフェリンはね雨きらい
しっぽが濡れてふわふわな
しっぽがしんなりしぼむから
しぼんだしっぽじゃ癒せない
傷付く小夜をモフれない
テオドールはエルフェリンの心情を夢想した。青い毛髪に狐のような耳、そして同色のしっぽを持つ、それ以外は人間の少女と何一つ変わらないエルフェリン。夕立に包まれた療養院にて唇を悔しそうに噛みしめる小夜を心配そうに見上げる彼女、エルフェリンを見てテオドールは彼なりに勝手ながらに夢想した。
「お力になれませんで。」
小夜が深々と頭を下げるのは、療養院のベッドに横たわる兵士の亡骸であった。戦闘外傷救護講習以降、前線で重傷を負った兵士はその生死に関わらず必ず療養院に搬送されてくるようになった。もちろん生存者も搬送されてきたが、中にはすでに息を引き取っているものもあった。どんなに小夜が献身的でも、ヴィルヘルムがどんなに天才的でも、すでに死んでいる兵士を蘇らせることはできなかった。小夜が来てから死者が激減した療養院ではあるが、まったく死者を出さないというわけではなかった。
ヴェルナーは死者をお看取りする小夜を見て思う。これが玄人なのだと。涙を流すことなく、きりっとした顔で死者の体を清める小夜、相手は死者であるにも関わらず、一動作ごとに必ず声掛けをする。なるべくきれいな姿で帰りを待つ遺族に送り届けてあげるため、小夜が細心の注意を払って最後のお世話をしているのが周囲にも伝わってくる。そして周りのスタッフ誰もが小夜の隠しきれない哀悼を理解していた。
きれいな姿に整えられた遺体はそれを待つ遺族のもとへ送られる。その際小夜は遺族への手紙を添えた。いつ何時、どういう状況で亡くなったのかを知らせる手紙であったためその内容は様々であったが、その書き出しはいつも一様であった。
こんな悲しい手紙をお届けすることをどうかお許しください。




