戦闘外傷救護講習③
担架作成に続き小夜はトリアージ(災害現場などで傷病人の優先順位を決めること)を教え始めた小夜は思わぬトラブルに見舞われた。災害医療においてはそのリソースを確保するため、軽症者から重傷者、そして治療適応外である死者とを分ける必要がある。しかしここで問題が起こった。助かる見込みのない、あるいは死んでしまった兵士を後送しないという選択肢を小夜が提示したところ、兵士たちが一斉に暗い表情を示し始めた。今までの戦いでは搬送手段がなかったため泣く泣く放置してきた仲間たち、それを運ぶ手段があるのなら一人残らず運びたい、それが兵士たちの真意であった。小夜は思わずもらい泣きをしながらお目付け役の将校の顔を伺うと、その将校は首を縦に振ってくれた。そしてそれを見つめていたヴィルヘルムは小夜の決断を喜んで手を叩き、ゲオルグは小夜の思惑通り泣いていた。
そして彼ら兵士の連帯感を小夜が改めて知らされる出来事が起こる。
「残念ながら亡くなった方の上には、黒い紙を載せて治療ができないという目印にします。」
すると兵士たちが少々ざわつき、そしてとある兵士が声を発した。
「黒い紙ではなく、手向けの花ではだめでしょうか?」
今度は小夜が涙を誘われた。




