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戦闘外傷救護講習②

「まずは緊急搬送機材の作り方から説明します。」


 いきなり全兵士に教育するのは難しいので、まずは数十人の兵士を前に小夜のレクチャーが始まった。聞くところによれば、彼らは担架(たんか)というものを知らず、けが人を運ぶ術がなかった。よって前線で動けなくなった兵士は死を待つしかなく、運よく療養院に辿り着ける兵士は自分で歩ける程度の外傷を負った者か、城塞都市オストプロシアの近郊で負傷し仲間に場内へ運び込んでもらえた者だけであった。担架の説明をしようにもこの世界に存在しないものが話せないこのルールのため、緊急搬送機材という長々しい名前で担架を呼ぶことになった。幸いにも兵士たちは一部の弓兵を除いて長く丈夫な槍を装備していた。これを担架の竿として使うことにした。二人の兵士に上着を脱いでもらい、上着の襟首からすそに二本の槍を通す。二枚の上着を通した槍を一定間隔離せば、上着がピンと張ることで即席の担架が完成する。小夜がこの世界に表れて以来春のような暖かさが続き、上着を脱ぐ兵士に躊躇(ちゅうちょ)を与えなかった。以前参加した災害医療講習で習った即席担架の作り方が、こんな形で役に立ったことを小夜は不思議に感じていた。さっそく即席担架を組み立て、それに負傷兵役を乗せて訓練を開始する兵士たち。搬送役は四人でそれぞれ担架の四隅をつかむ。


「おお、これなら走って運べる。」


「すごい、運びやすい。」


「乗り心地も思ったほど悪くないな。」


 兵士たちは口々に初めて見る担架のすばらしさを口にし始めた。


「担架に乗せるときは兜と鎧外したほうが良いですか?」


 前列の兵士が聞いてきた。


「声をかけても返事がない場合は重くて大変だろうけど兜と鎧は外さないで。返事ができる場合、頭や首、胴体にけがが無ければ外しても大丈夫。」


 兵士の防具は頭を守る金属製の兜と胴体を前後ろから金属の板で挟む簡易的な鎧を身に着けていた。本来これらを外したほうが搬送はしやすかろうが、頭部や胴体部損傷の場合には脳や脊髄に損傷が及んでいる可能性が否定できない。無理に兜や鎧を外すことは、損傷を悪化させることにも繋がり兼ねない。筋骨隆々に鍛え上げられた仲間思いの兵士たちは少しでも負傷した仲間の生存率を上げるためなら、多少の重さを(いと)うことは無かった。


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