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城壁前の戦い⑥

 小夜とヴィルヘルム、ヴェルナーとテオドール、そしてエルフェリンに至るまで、口元を布で覆う白いマスクを着けて、くすんだ白のマントを羽織った。これらは古いシーツを洗って天日干しし、白衣の代わりにしたものだからその白はくすんでいた。治療に際し血液や体液が付いた場合捨ててしまうことになるので、物資に乏しい療養院ではこれが最善であった。まず二つのベッドを横向きに並べ、その間隔を開けたところに腹が浮かぶ形で兵士にはうつ伏せに寝てもらう。それをベッドの下から見上げるヴィルヘルムと小夜、彼らには兵士の上腹部だけが見えていた。うつ伏せになった兵士の胃袋と腹壁は重力で隙間無く接触している。それをヴィルヘルムの『透視術』とも呼ぶべき施術で確認した。すべてを確認した小夜はともにベッドの下にいるヴィルヘルムに目配せした。深くうなずくヴィルヘルム、そして目配せでは合図できないベッドのそばに立っているテオドールに言った。


「テオドール君。」


「わかってます。負傷者の手を握るのが僕の仕事です。」


 察しの良くなったテオドールが快活に答えた。


「よし、じゃあ行こう。ヴィルヘルム、お腹から胃袋まで孔を開けて。指三本くらい通れせる孔を。ヴェルナー君、針に糸通してあるね。」


「はい、釣り針みたいに曲げた針に絹糸通したの二つ、煮沸済みです。」


 胃袋があると思われる腹部を『鎮痛』し、消毒用高濃度アルコールで消毒したヴィルヘルム、頷いた小夜を見て彼は施術に入った。いつも通り青白い光が皮膚をかき分けるように孔が開き始めた。しばらくするとその孔は胃袋に達し、胃液と思われる黄色い液体が流れ落ちる。その酸っぱい匂いに顔をしかめながら先ほどの曲げた針を胃袋側から突き刺し、回転させるように腹壁側から取り出したヴィルヘルム。これを二回繰り返し針を外して糸の両端を結ぶ。胃袋と腹壁を文字通り()()()()()ので仰向けになっても胃袋と腹壁が離れることはない。ベッドの下から這い出した小夜とヴィルヘルム、手を消毒し直した二人は先ほど空けた孔に漏斗を差し込み、そしてヴィルヘルムが孔を漏斗の太さまで小さくした。かくして彼らは小夜がいた世界では胃瘻(いろう)と呼ばれる栄養の代替輸送路を確保したのであった。


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