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城壁前の戦い⑤

 息を吹き返した上気道熱傷の兵士、彼に作られた新しい呼吸孔、喉の瘻孔には管を短く切った漏斗(ろうと)が留置された。漏斗は円錐型に広がっているため万が一にも気道の奥に滑り落ちることもない。呼吸が安定した彼は他の熱傷兵士たちと一緒に療養院へ担ぎ込まれた。他の熱傷兵士たちは『治療術』によって表皮が再生しているから、熱傷患者に危惧される感染のリスクは低いと小夜は判断した。あとはしっかりと失われたタンパク質や水分の負債を経口摂取でしっかり補えばよい。しかしヴィルヘルムが担当したこの兵士は顔面だけでなく口の中まで黒焦げであり、とても口から食事や水分を摂るのは難しいだろう。小夜はヴィルヘルムに尋ねた。


「この火傷治すのにどのくらいかかる?」


「表面的な火傷ならすぐに治りますよ。ただ目玉の再生には時間が必要です。」


≪きみは目玉まで再生できるの!!≫


 想像以上の返答に驚く小夜ではあったが聞きたいのはそこではない。驚きを悟られぬよう、努めて冷静に話した。


「心配なのは喉だよ。口から食事を摂れるようになるのにどのくらいかかるかな?」


「治療してしばらくは腫れが残りますから、3日は難しいと思います。」


 ヴィルヘルムは答えながらようやく小夜の考えを理解した。『治療術』で火傷で損傷された部分を再生した後、多量の栄養を摂取しなければ兵士は全身から再生に回した成分を奪われ衰弱死してしまう。しかし栄養を取り入れる通路を確立しないと『治療術』が使えない。かといって『治療術』を使わない自然治癒で助かる火傷とは思い難い。


「導師・・・・・・。」


 ヴィルヘルムの弱弱しい呟きに小夜は返事をすることなく、自分のプランを提案して見せた。


「ヴィルヘルム、きみは確か体に傷を付けずに中の状態を診ることができたよね。」


「はい、ある程度の形態はわかります。」


「では、胃袋の場所を特定して。」


 胃袋はこの世界でも知られた存在らしい。この言葉を使えたことに小夜はほっとしつつ、ヴェルナーとテオドールに命じた。


「お湯を沸かして、漏斗と縫い針二本、絹糸(けんし)煮沸(しゃふつ)しましょう。」


 これから何が始まるかもわからないまま、療養院のメンバーたちは小夜の指示を機敏にこなし始めた。


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