謁見②
「ふーん。」
≪ほ~ら見ろ、お偉いさんの反応なんてこんなものなんだよ。≫
身長と頭髪に恵まれない領主と呼ばれるお偉いさん、ヴィルヘルムが熱弁を振るって小夜を紹介した返事がこれだった。それでもヴィルヘルムは情熱を抑えきれず、小夜の素晴らしさを懸命にアピールし続けた。
≪もういいよ。ここで市民権が保証されればそれ以上に望むものはないから。≫
ヴィルヘルムが弁を振るうのに疲れ始めたころ、ようやく領主が小夜に質問をした。
「それほどに優秀な治療者ならば、一つ私の質問に答えてみてくれ。」
見るからに元気も生気もない、領主が口を質問を始めた。
「私の知り合いでいるんだよ。自分の命令で、若者が死に過ぎて・・・・・・。」
嗚咽を交えながら領主は続けた。
「苦しみつらい日々を送っている、そんな知り合いがいる・・・・・・。」
「そんな彼に君ならなんと声をかける?」
そう言いながら領主と呼ばれる小男は苦しそうに右手で胸を押さえ、小夜に涙目の視線を向けた。唖然とするヴィルヘルムの前で小夜は優しい声で答えた。領主を真似るように右手をその胸に当てながら。
「それはさぞかしおつらい経験でしたね。領主様。そのように傷ついたその方にお伝えください。そしてそれを聞いて傷ついた領主様にも同じ言葉をお贈りします。」
共感と呼ばれるこの言葉に領主は泣き崩れた。誰一人として言ってくれなかったこの言葉。
「違います。若者たちの死は領主様のせいではありません。」
「そんなことはありません。領主様は頑張っておいでです。」
「考えすぎです。領主様のお役に立てて、若者たちは幸せであったことでしょう。」
誰もが自分自身を責め続ける領主の考えを否定した。もちろん善意から。しかし領主は自分をありのままに受け入れ、そして否定しないそんな言葉をずっと待っていた。
≪そうだ、私は辛かったのだ。苦しかったのだ。その気持ちを彼女は拾い上げてくれた。≫
領主が感激のあまり泣き過ぎたせいで、謁見はぐだぐだのまま終わった。とりあえず小夜の城塞都市オストプロシアにおける市民権は、小夜の振る舞いと弁舌にて確立された。この光景をまるで伝説に残る絵画のワンシーンかの如く眺めていたヴィルヘルムは、小夜への忠誠をさらに強固なものへと変貌させていた。




