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謁見①

 足を負傷した兵士は良好な経過を療養院で過ごしていた。そんなある日ヴィルヘルムが小夜を療養院から連れ出した。


「どうしても会わないとダメ?」


 この時ばかりは小夜が気弱にヴィルヘルムに要望した。だがヴィルヘルムは意気揚々と答えた。


「ダメに決まってるじゃないですか。この城塞都市オストプロシア随一の才媛、サヨさんを領主様に紹介しない理由がありません。」


 ヴィルヘルムは頼まれてもいないのに話し続けた。


「サヨさんは僕たちの希望です。救い主です。きっとこの戦争を我々人類の勝利へ導くため、神が私に授けてくれた導師(メンター)なのです。」


 城塞都市オストプロシアを治める領主の館へ、二人は徒歩で向かっていた。小夜は正直気が重かった。小夜はどうにも権力者が苦手である。しかしながらこの世界で生きていくわけだから、それなりの手続きが必要であることは小夜にも理解できる。しかしいきなり行政のトップに会うことになるとは。小夜の三十年弱を数えた人生の中でこの数日間は初めての連続、一日中ジェットコースターに乗らされている気分であった。それに耐えつつもここまで来たのに、とうとう偉い人とお目通りさせられてしまう。小夜には苦痛でしかなかったが、ヴィルヘルムは喜色満面であった。


「私はついに見つけたのです。」


 ヴィルヘルムは施術後の怪我人たちが死に過ぎるのを自分なりに考察し続けていた。先輩『治療師』たちときたら情熱などすでに持ち合わせておらず任期空けだけを楽しみに暮らしている。そんな上司たちは相談相手にもならない。あれやこれやと文献を読み漁る日々に飽き飽きしていたヴィルヘルムは、上司たちが情熱を失った理由を理解しかけていた。彼らもヴィルヘルムと同じ絶望を味わい、そして現在の無気力に達してしまったのかと。しかし今のヴィルヘルムは違う、『治療術』だけではない、人生の導き手とも言える導師(メンター)を手に入れたのだ。


「オストプロシア全域、いや国中の誰もにサヨさんの素晴らしさを知って頂くのです。」


 ヴィルヘルムには自分の気持ちが抑えきれなくなり、思わずそれが声に漏れ出た。全世界にサヨの知識を知らしめたい。そんな思いに後押しされ、ヴィルヘルムは有頂天全開の状態で領主の館へ向かっていた。


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