オストプロシアの早春④
比較的なだらかな山が連なる城塞都市オストプロシアの北側に比べ、南側は隆起と沈降に富みその探索は簡単ではなかった。それでも兵士たちは悪路に挫けず探索を続けた。城外を謳歌する自由を得たことが彼らの足を軽くしていた。しかし彼らは知らなかった。春を迎え始めた山の危険を。冬に凍てついていた地面は少しずつ解け、その地盤を弱くしていた。しかし山歩きなどほとんどしたことのない兵士たちにその危うさは感じることが出来なかった。
とある探索小隊が山の探索中に、突然自分たちの足元が崩れるのを感じた。次の瞬間山の一部がそのまま崩れ落ちる様に地滑りが発生し、兵士たちは土に流される様に周辺の樹木とともに山裾へと運ばれていった。
凄まじいばかりの地鳴りが収まり、辺りに静寂が戻ってきた。兵士たちには山の斜面すべて崩れ落ちた様に感じられたが、実際には地滑りは小規模で高さも二階建ての家程度だったためほとんどの隊員が難を逃れた。小隊長が点呼を取り始め、幸運にも全員の生存が確認された。そして帰りの隊列を組もうとして、一人声だけしか聞こえず姿の見えない兵士がいるのに小隊長が気づいた。
小隊が一命を除いて集合し、その無事を確認後に最後の一名を探した。元気な声が周囲に響くが肝心なその姿が見つからない。
「隊長、あそこに手が見えます。」
兵士の一人が横倒しになった大木を指差した。その大木の陰には確かに一所懸命振られる右手があった。急いで駆け寄った兵士たちが見たものは、大木に両足を押し潰され苦痛に顔を歪めつつも照れ笑いする兵士だった。
「大丈夫か、痛むか?」
「挟まれた瞬間はすごく痛みましたが、なんだが感覚が鈍ってて、今はそんなに痛みません。」
大木に挟まれた兵士を救い出そうと兵士たちは大木をどけようとするが、大木はびくともしなかった。
「仕方ない、斧を持ってくるか。あとは『爆炎術師』殿をお呼びして発破をお願いするか。」
「隊長、私の挟まれた足を切ったり吹っ飛ばしたりするんですか?」
隊長の言葉に足を挟まれたまま動けない兵士はおどけて見せた。この様子から隊長は彼の容態を重篤とは判断せず、部隊を二つに分け城塞都市オストプロシアに戻り救援を呼ぶ隊とこの場に待機する隊とした。




