海に繋がる川④
「無事渡りきりました。」
先日発見されたばかりの城塞都市オストプロシア近郊に流れる川、その川を挟んで数人の兵士たちが集まっていた。ロープを編み込んで作った即席の網、その端を持って渡河した兵士たちが震えながらその成功を知らせた。彼らは濡らさぬ様に運んだ薪に急いで火をつけ、冷え切った体をどうにか温め始める。渡らなかった兵士たちが川向うに渡された網の反対側をピンと引っ張る。これで川を横断する形で網がかけられたことになる。
「まさかこんなことに『術』が役に立つとは・・・・・・。」
ゲオルグは何とも言えない感慨を感じつつ、小夜の策を頭の中で確認した。
「まず川の向こう側まで網を張ります。」
小夜は説明を始めた。
「網は川底まですっかり覆わなくても大丈夫、川の水面に浮かんでくる魚を網にかけられれば良いです。」
「サヨさん、網を張るだけでは魚はかかりません。網を避けて泳ぐだけです。」
魚捕りに詳しいと思われるヴェルナーが口を挟んだ。
「大丈夫、魚が網を避けられないようにすれば良いだけだから。」
にこりと微笑んだ小夜はゲオルグに説明し始めた。ゲオルグたち『爆炎術』の使い手にしか出来ない漁法を。ゲオルグはその作戦を聞いて驚き、小夜の知識に驚嘆した。それを見ていた麗しの『治療術師』ヴィルヘルムは如何にすればこの話に自分が参加できるかを思案していた。
ドォン
ゲオルグの『爆炎術』が川の中にあった岩で炸裂した。すると先ほどまで元気に泳いでいた魚たちが水面に浮き上がり、次々と下流に流されて網に掛かり始めた。これが小夜の作戦、ダイナマイト漁あるいはガチンコ漁と言われる方法で、爆音によって魚を気絶させ浮き上がったところを捕まえる、小夜のいた世界で行えばお縄を頂戴することになる禁じ手だった。
網には五十を下らない失神した大きな魚たちが掛かっている。川の向こう側に渡った兵士たちはまた冷たい川に入るのを厭わず、思わぬ釣果に歓喜しながら魚の入った網を引きつつ帰りの渡河を開始した。そんな彼らを見つめながら、ゲオルグは小夜の発想に感心しきりの状態で呟いた。
「導師。またしても素晴らしいお導きを賜りました。」




