城塞都市ケルニヒベルグ⑫
翌日も頭痛を訴える兵士の元へ足を運んだ小夜たち。柳の煮出し湯が少し効いたものの、やはり起き上がると頭痛、続いて襲ってくるめまいにて兵士は起き上がれないままの状態にあった。
「ありがとうございます。昨日よりはだいぶ楽です。」
弱弱しい声で柳の煮出し湯の効果に感謝を訴える兵士、しかし小夜には見て取れるほどの効果を感じられず、兵士の小夜たちに対する気遣いが言わせた言葉のようだ。
小夜は療養院に戻りずっと思案に耽っていた。
≪あの頭痛とめまい、なんかあると思うんだけどなぁ。≫
片頭痛のような特に原因のはっきりしない一次性頭痛、そして何らかの原因がある二次性頭痛、戦闘後の症状だから二次性頭痛と思われるのだがその原因が小夜には特定できない。
≪せめて医学書なんかがあれば調べられるかも知れないのに・・・・・・。≫
しかし城塞都市オストプロシアには医学書など存在しないし、小夜以上の医学的知識を有する者もいない。あの兵士を救う知識はおそらく小夜の脳内にしか存在しないだろう。
≪もともと私は診断する立場ではないからなぁ。≫
小夜は看護師であり、診断するのは医師の仕事、だからこの世界でも患者さんの体に触れる診察は出来るだけヴィルヘルムに任せていた。そして小夜自身の経験や知識からアドバイスする、そんな小夜なりの役割分担意識があった。
「こらっ、またやりましたね。」
小夜の思案を遮ったのは、テオドールの怒声だった。声がした厨房を見やるとエルフェリンが慌てて駆け出してきた。
≪なんか悪戯したな、エルフェリン。≫
小夜の横を駆け抜けようとしたエルフェリンだが、その尻尾を小夜に掴まれつんのめった。そして小夜を見上げる上目遣いで、エルフェリンは明らかに媚び始めた。厨房からカンカンになったテオドールがお玉を振り上げながら出てきた。小夜の後ろに隠れようとするエルフェリンであったが小夜に咎められ万事休す。目の前に現れたテオドールに不貞腐れたような顔で目を逸らすエルフェリン。
「今度は何をやらかしたんだ?エルフェリンは?」
小夜は呆れながら怒りの収まらないテオドールに尋ねた。




