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No Name's Trust  作者: 大道福丸
禁忌の魔石と不死殺しの炎
74/100

炎竜満開

「遅いわよ!!」

「いっ!?」

「遅刻してきたのに格好つけてんじゃないわよ!!」

「いいっ!?」

 怒られた。トモルはめちゃくちゃ怒られた。せっかくの登場が一瞬で台無しになってしまった。

「あの言い訳をさせてもらうと、これでもできる限り最速で来たんですよ」

「その立派な翼を取りに行ったのに、最速?」

「いや、このハネドラグがあったからギリギリ間に合ったんですよ。これはドラグゼオの炎の消費を抑えて、長距離移動を可能にするものですから」

「普通にヘリで来たんじゃ間に合わなかったってこと?」

「そういうことにしておいてください」

「そういうことにって……まぁ、いいわ。あいつを倒してくれれば何でも」

「ぐがあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 完全にそれは人の形を逸脱していた。

 腕だけでなく足も伸び、指の先からは鋭い爪が生え、裂けた口からは太い牙が覗く……談笑している間にマゼフトは不死の怪物として生まれ変わっていたのだ。

「あたしはもうアピディウスを使えない」

「言うまでもなく、我の攻撃は全く通じない」

「この戦いの勝敗はあなた次第よ」

「責任重大ですね。あまり重い荷物を背負いたくないんですが……やるしかないなら、やりましょう!!」

 ドラグゼオは背中の翼に炎を送り込む!ハネドラグがその炎を凝縮、効率良く噴出することで、一気に加速する!

「もう一度エクスフレイムスラッシュで!いや、さっき以上の力と速度で!」

 手に持ったガンドラグにも精神エネルギーを注入し、グリップの底から発生する炎の刃の勢いを増した!しかし……。

「ぐがあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 マゼフトはホバリングしながら、さっきよりも遥かに大きくなった口を限界まで開く。その奥が輝いたと思ったら……。

「ばあっ!!」


ババババババババババババッ!!


 無数の光の弾を吐き出した!

「いっ!?」

 たまらずドラグゼオは攻撃を中止。きりもみ回転をして弾丸を回避すると、そのままマゼフトを通り過ぎた。

「何でもありなの?本当化け物じみちゃって。こうなったら後ろから……!」

「ぐがあぁぁ!!」


ババババババババババババッ!!


 そうはさせないと怪物は反転!再び口から光弾を発射した!

「キャノン&ガトリング!」

 対するドラグゼオは背部ユニットからキャノンを右肩に、ガトリングを左肩に展開!そして……。

「喰らえ!!」

 間髪入れずに発射!


ドシュウン!ババババババババババッ!


 迎撃のために放たれた弾丸は役目を果たした!その弾幕でマゼフトの吐き出した光弾を全て撃ち落とす……だけでは、終わらず……。


ドシュウン!ババババババババババッ!


「――ぐぎゃあぁぁ!!?」

 マゼフト本体も貫いた!キャノンに顔を半分抉られ、ガトリングに羽を穴だらけにされた!しかし……。


グチュ……グチュグチュ……


「ぐがあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 すぐに元通り。再生能力は先ほどよりも遥かにパワーアップしていた。

「炎が通じにくい相手用の通常兵装だから効かないのは覚悟していたけど、実際にものともしてない姿を見るとちょっとショックだね。やはりこれは炎で焼き尽くすしかないか!」

 そう言いながらドラグゼオはトリガーを押し込みながら、ガンドラグで十字を切った。

「十字葬炎弾!!」


ババババババババババババッ!!


 桃色の十字架が不死の怪物を天に召そうと襲いかかる……が。

「ぐがあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 マゼフトは羽を力一杯、空気に叩きつけるように羽ばたかせて、その場から離脱。

 ターゲットを見失った炎の十字架は地平線の彼方に消えて行った。

「反応がいいな……今まさに良くなっている最中って言った方が正確かな?」

「ぐがあぁぁぁぁぁぁっ!!」

「ちょっと褒めたからってはしゃがないでよ!!」

 マゼフト、ドラグゼオ、共に示し合わしたかのように拳を振り上げながらお互いに向かって突進!そして勢いそのままにそれを撃ち込む!


シュッ!!ドゴッ!!


「――ぐが!?」

 マゼフトの拳は回避され空を切ったが、ドラグゼオの拳は見事に怪物の顔面に命中!さらに……。

「燃えろ!!爆炎ナックルファイアー!!」


ボオォォォォォォォッ!!


 拳から炎を噴射!マゼフトの首から上をピンクで包みながら、吹き飛ばした……が。

「ぐ!ぐぎゅうぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

 首を振り、炎を払うと、焼け焦げてはいたがマゼフトの顔は健在であった。

「てっきり不死殺しの炎に触れた瞬間に、灰になって消滅するもんだと思ってたけど……そうでもないみたいだね」

「「その通り!」」

「オルコさん?メルヤミさん」

 声のする方、下を向くと屋上でオルコとトゥレイターが口元に手を当て、叫んでいた。

「そいつはかなり上手く不死化している!生半可な炎では倒せない!」

「あたしもフラフラになるくらい力をつぎ込んで、ようやく腕を一本だけ消すことができた!」

「だからお前もありったけの炎をぶちこめ!そうでなければ、奴は殺せん!!」

「なるほど……」

 ドラグゼオは目線を再び上に、マゼフトの方を向くと……。

「ぐがあぁぁぁぁぁぁっ!!」


ババババババババババババッ!!


 不死の怪物は懲りずに口から光弾を放ってきた!

「当たりませんよ!」

 けれどやはりドラグゼオにはかすることもできず。

 ハネドラグから炎を吹き出し、ガンドラグをだらりとぶら下げながら、桃色の炎竜は怪物の周りをぐるぐると旋回した。

「さてさてどうしたものか……勝手にミラージュからのアスタリスクの黄金パターンでどうにかなるなんて都合のいいこと考えていたからな。だけど……」

「ぐがあぁぁぁぁぁぁっ!!」


ババババババババババババッ!!


「だから当たらないって」

 光弾の雨を器用に掻い潜りながら、トモルはマゼフトを改めて観察した。

 その身体には最初の一撃でつけたX状の傷がくっきり残っていたが、動きに、そして何より生きることに支障はなさそうだった。

(エクスフレイムであの程度なら、アスタリスクでも倒しきれないかもな。となるとドラグゼオの最大の必殺技のパニッシュメントしかないんだけど……)

 回避飛行を続けながら、ドラグゼオは一瞬だけまた緑色の眼を下に、自分を見守る仲間の下に向けた。

(この距離だとメルヤミさん達を巻き込んじゃうかも。あの砦が崩れたら、姿が見えないケントさん達ももしかしたら……)

 殷則とは違い、最低限の人間性を残しているトモルにはそんなことはできない。ならばどうするのか……。

(作るか新必殺技。一発でガス欠になるパニッシュメントよりも省エネだけど威力は上々、攻撃範囲も広すぎない、そんな使い勝手のいい奴を)

 新たな挑戦に挑む覚悟を決めたトモルの心に呼応して、ドラグゼオは熱を帯びた。

「まぁ、作るって言ってもおぼろげながらずっと考えていたし、もう仕込みも終わってるんだけどね!!」

 桃色の炎竜は手に持った愛銃を力一杯引っ張る!すると……。


ボシュウゥンッ!!


「――ぐがぁ!?」

 マゼフトが動きを止めた!いや、止められた!炎の糸によって!

 実はドラグゼオは飛んでいる最中にガンドラグの銃口の下から見えないくらいの細い炎のワイヤーを放出しており、それでマゼフトを囲むように旋回飛行をしていたのだ!そしてガンドラグを引っ張ったことにより、ワイヤーは締まり、不死の怪物の腕と足を拘束したのだ!

「名付けてフレイムバインド」

「ぐがあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ならばとマゼフトは口を開くが……。

「もう見飽きたからいいよ、それ」


ボシュウゥンッ!!


「――ぐっ!?」

 竜は新たにワイヤーを発射しながら、銃でくるりと円を描く。獣のように変化した大口もまた糸でぐるぐる巻きにされて塞がれてしまった。

「ぐうぅぅぅぅッ!!」

「苦しいだろうけど、もう少しの辛抱だよ。ぼくがあなたが本来いるべき場所に帰して上げます」

 ワイヤーを外そうと空中でのたうち回る怪物を見据え、トモルは意識を集中した。

(パニッシュメントのように全身から炎を放出するのではなく、とどめる……ぼく自身を、ドラグゼオを炎で覆い尽くす……!!)


ボオォォォォォォォッ!!


「……できた」

 それはまさに火の玉だった。ドラグゼオはその全身に炎を灯し、巨大な火の玉と化したのだ!そして……。

「あとはこれを……最高速でぶつけるだけ!!」

 その火の玉は空を疾走した!地面と平行に、ただ真っ直ぐ、いつもよりも眩い桃色の軌跡を描きながら!ターゲットに向かって!

「ぐ、ぐがあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


ババババババババババババッ!!


 口の拘束を解いたマゼフトが光弾をばらまく!けれど……。


ジュウゥゥゥゥゥッ!!


「ぐがあッ!?」

 それらは全て竜が纏う炎に触れた瞬間、消えてなくなった!つまりドラグゼオは止まらない!大気を焼き尽くしながら、マゼフトに……。

「攻防一体!これが……ドラグゼオ葬炎弾!!」


ジュウゥゥゥゥゥッ!!


「――ぐがあ!?」

 圧縮された高密度の炎に触れた瞬間、マゼフトの皮膚は灰となった。そしてそのまま肉を!骨を!内臓を!彼の全てを灰塵とする!


ボシュウゥゥゥゥゥゥッ!!


 不死を貫き、炎を消した竜に灰が降り注ぐ……。まるで勝利を祝うシャンパンシャワーのように。

「これで遅刻した分は……取り戻しましたよね」

 竜は下にいる仲間達にピッと敬礼すると、メルヤミはビシッと親指を立ててそれに返答した。


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