本命到着
「腕がぁぁ!?俺の腕がぁぁぁぁっ!?」
右腕は完全に灰となり、左手で抑えられた肩の傷口から再生する様子も見られない。
遂に不死にダメージを与えたのだった。
「やった……けど……!」
しかし、桃色のマスクの下のメルヤミの顔は晴れない。逆に言えば腕にしかダメージを与えられていないから……。
(腕ごと真っ二つにするつもりだったのに、アピディウスを食らった瞬間に力任せに軌道をずらされた。これじゃあ……)
「くそ!くそ!くそ!ぐそおぉぉぉぉっ!!」
苦しみながら後退するマゼフトの顔がさらに人間離れしていく。いや、顔だけでなく、身体も大きくなっているような……。
(ダメージを負ったことで変異が加速したの!?早く!一刻も早く仕留めないと!!)
トゥレイターは再びアピディウスを両手で握り、精神を集中させた。しかし……。
ぐらっ……
「……あ?」
追撃をするどころか足元がふらつき倒れそうになった。
「メルヤミ!!」
ガシッ!!
「オルコ……」
古代の魔術師がふらつくお嬢様を支える。彼が肩を貸してくれたことで、なんとかメルヤミは倒れずに済んだ。
「ごめんなさい……あなたが最高のチャンスを作ってくれたのに」
「気にするな。お前はよくやったよ」
「その言い方……もう終わったみたいじゃない」
「そうだ。お前の戦いは終わったんだ。慣れないセールアルムの消耗は激しい。もうお前はさっきみたいな炎は出せない」
「でも、やらないと!!不死を殺すためにはアピディウスでないと!ぐっ!?」
オルコから離れようとしたが、先ほどよりもさらに足から、身体から力が失われていて、もはや立つこともままならなかった。
「無理だ、お前に戦闘続行は」
「じゃあ、あいつは……」
「ぐがあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「「!!?」」
マゼフトの咆哮!砦を震わすほどの獣じみた叫び声が響くと、その赤黒い背中がむくむくと隆起し……。
バサッ!!
羽が生えた!薄い皮膜を張ったような羽が生えたのだ!
「ヤバい!あれが羽だとしたら!あれが飛ぶためのものだとしたら!!」
「ぐがあぁぁぁぁぁぁっ!!」
ブォン!!
「――ッ!?」
予想通りマゼフトは空を飛んだ。羽を豪快に動かし、メルヤミ達に強風を吹きつけながら、その巨体を宙に浮かした。
「飛ばれた!飛ばれてしまったら、あたしの、アピディウスの攻撃はもう届かない……!」
メルヤミはただそれを苦虫を噛み潰したような顔で眺めることしかできない。
一方のオルコは……。
「何ら問題はない」
一方のオルコの表情は穏やかだった。とてもじゃないが絶望の窮地に立たされている顔ではない。
むしろ希望に包まれているような、そんな顔だった。
「問題はないって……奴を倒せるのはアピディウスだけなのよ!それが当てられないなら……」
「何を言っている?他にもいるだろ。不死を殺せる炎を持つ者が」
「不死を殺せる……え!?まさか!?」
「耳を澄ませてみろ。聞こえるはずだ……希望の近づく音が!」
メルヤミは言われた通り、アピディウスではなく耳に意識を集中した。すると……。
ボオォォォォォォォッ!!
「!!!」
聞こえた!炎を吹き出す音が!そしてその音がどんどんこちらに近づいて来ている!
喜びからかメルヤミは思わず空に向かって叫ぶ!
「ドラグゼオ!」
「はい!!」
見慣れたピンクとブラックのボディー!炎を模した角飾り、エメラルドのような二つの眼!そして見慣れない灰色の翼……。
トモル・ラブザが!ドラグゼオが!不死殺しの力を持った者が!空に炎で桃色の軌跡を描きながら、こちらに向かって来ていた!そしてそのまま……。
「エクスフレイムスラッシュ!!」
ザザンッ!!
「があぁぁぁぁぁっ!!?」
通り過ぎ様にマゼフトにX状の傷を刻みつけた!
空中で悶え苦しむ不死の怪物。
ドラグゼオはスピードを緩めながら、旋回。
そちらを向き直しながら高らかに叫んだ。
「定刻通り……ではないですけど、ドラグゼオwithハネドラグ、ただいま参上です!!」




