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No Name's Trust  作者: 大道福丸
禁忌の魔石と不死殺しの炎
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決戦開始

「あいつら……間に合わんかったな」

 大きな長方形の箱を背負い、巨岩の陰に隠れているケントはそう言うと、頭を抱えた。

「まぁ、そう言うな。間に合わなかったのはこちらも同じだ……」

 ジョゼットは顔の上半分だけを岩から出して、遠くに見える古い砦跡を見上げた。

 その砦のさらに上には分厚い黒い雲、文字通り暗雲が立ち込めていた。

「殷則捨てられた部下に尋問し、いくつかの隠れ家を特定し、ついに奴らの居場所を突き止めたはいいものの……」

「あの雲はエレシュキガルが目覚めた証。奪われた日から六日、我の予想よりもあいつは優秀だったみたいだな……腹立たしい!」

 オルコは杖で地面を叩き、怒りを露にした。

「今さら言っても仕方ないわ。幸いにも不死殺しができる可能性があるアピディウスはここにある」

 メルヤミは腰の後ろにマウントされた剣の柄を握りしめた。

「ならばとっとと突入するぞ!」

「アホか!古代人!アホか!!お前んとこの遺跡にいたよりもずっと人数おるねんで!策とかもっと考えんと」

「アホはお前だ、現代人」

「あ?」

「策とは弱者が強者に勝つために用意するもの……あんな有象無象の盗人集団には必要ないだろ。我らならな」

 ケントが周囲を見回すと、メルヤミが、ジョゼットが、メイド隊が首を縦に振って、古代人を肯定した。

「せやな……今起こっていることを正確に理解しているかどうかもわからん連中相手にビビる必要なんてないか」

「そうだ!我らはただ正面からその力で蹂躙してやればいい!!」

「決まりだな……お嬢様、号令を」

 メルヤミは小さく、けれど力強く頷くと、一歩前に出た。

「目標は禁忌の魔石エレシュキガルの奪還!テュシア盗賊団の壊滅!そして生まれていたら不死の怪物の滅殺よ!」

「「「おおう!!」」」

「細かい判断は各々に任せる!あなた達にはそれだけの知恵と力がある!あたしはそう信じている!だから……迷う必要などない!全力で突撃よ!!」

「「「おおう!!」」」

 オルコはそのままの姿で、ケントはベッローザに、他のみんなもそれぞれの愛機を装着して飛び出した!向かうは盗賊団の根城と化した古き砦だ!

「ん?んん!?敵襲!?敵襲だぁぁぁ!!」

「「「!!!」」」

 見張り役が隠れもせずに堂々とこちらに向かって疾走する集団に当然気づくと、声を上げ、仲間を呼び出す!

「俺達に喧嘩を売ろうなんてどんなバカだ?」

「まぁ、ちょうど暇していたところだ!」

「腹ごなしに暴れてやる!!」

「ペザンテ!!」

「BP・ボーデン!!」

「ゲイム・S!!」

「ガナドール・フシール!!」

「エクラタン・ソルダ!!」

「まだまだいるぞ!この野郎が!!」

「「「おおう!!」」」

 ジョゼット達の実力を適切に測る実力もないまさに有象無象の輩達もまた愛機を装着!フォーメーションや連携など何も考えずに突っ込んで来た!

「あいつらアホか?わざわざ砦の外に出てきおった」

「アホだからいいのだろう。使い捨てにするにはちょうどいい」

「そんな奴らに使われて、ピースプレイヤーが可哀想や。盗品やろうけど、いいチョイスやってのに……こうなったら、また回収してワイのものにしたるか!その方があいつらも嬉しいやろ!!」

 ベッローザの赤いマスクの下、ケントは舌なめずりをした……が。

「あいつらの相手は私とメイド隊がする。お前はオルコとお嬢様と一緒に砦の中に入れ」

「あの人数を旦那達だけで?」

「そうだ!私のブラーヴ改二は閉鎖空間では全力を出せない。外で暴れているのがちょうどいいのさ」

「せやかて……」

「リベンジしたい相手がいるんだろ?」

「!!」

「だったら無駄な消耗はするな。ズタボロのコテンパンにするんだろ?」

「……せやったな。あんだけ大口叩いて、好き勝手やらせてもらったんやから、きちんと実現しないと、カッコつかへんよな!!」

 ケントベッローザはあの時のように自らの手のひらにパンっと拳を叩きつけた!

「では、私が道を作る!その隙に一気に砦まで!!」

「おう!」

「任せておけ」

「任せる!!」

 ブラーヴ改二は足を止めると、両手に大砲の付いた大剣、もしくは大剣の付いた大砲を二本召喚!エネルギーをチャージしながら、その砲口を敵に向ける!

「フルパワー……ダブルシュート!!」

「「「!!?」」」


ドドシュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!


「ぐうっ!?」

 二本の光の奔流が闇を切り裂き、盗賊達を飲み込み、そして辺り一面に土埃を巻き上げた!

「おい!?野郎ども!?大丈夫か!?」

「くそ何も見えやしねぇ……!?」

「みんな!?どこに……生きているのか!?」

 埃のカーテンに包まれ、分断された盗賊達は恐慌状態に陥っていた。つまり……。

「狙い通り……チャンスや!今なら奴らの目がくらんどる!!」

「では、その間に……」

「行くとしますか」

 そのどさくさに紛れて、ケントベッローザ、オルコ、メルヤミトゥレイターが一気に混乱する盗賊団の間を駆け抜ける!

「今、何か通らなかったか!?」

「まさかもう突破されたのか!?」

「も、戻れ!!今、通り過ぎた奴を追え!!」

「させません」

「「「!!?」」」


ザシュ!!


 盗賊団員達が最後に見たのは、噴水のように噴き出す自らの血だった。

 みつ子、ジャニス、トマサのヴァルターリアがすでに背後に忍び寄っており、躊躇いもなく、ナイフを喉に突き刺したのだ。

「わたくし達も狩っていきましょう」

「紅茶を淹れるように」

「丁寧に、確実に」


バン!バン!バァン!!


「がっ!?」「ぎっ!?」「ぐっ!?」

 残りのメイド、ゾーイ、星鈴、アレクシスヴァルターリアはライフルで言葉通り丁寧に慈悲を与える価値のないクズどもの急所を撃ち抜いていく。

「ぐわあぁぁぁぁぁぁっ!?」

「ぐきゃあぁぁぁぁぁっ!?」

「大丈夫か!?何があっ……ぐがあっ!?」

「くっ!?これは勝つとか負けるとか言っている場合じゃねぇ!!」

 阿鼻叫喚の中、早くも心が折れた一人の盗賊が戦うことを放棄して逃げ出した!……が、悲しいかな逃げた先が最悪だった。

「どこに行くつもりだ?」

「え?」

「お前が行っていいのは」


ザンッ!!


「……え?」

「地獄だけだ」

 ブラーヴ改二の大剣が唸りを上げ、心の折れた盗賊を腰から真っ二つにし、さらにその凄まじいパワーに伴う暴風で自ら巻き上げた土埃を全て吹き飛ばした。

「何……が!!?」

 団員達は目を疑った。目の前に広がる景色を信じたくなかった。

 土埃のカーテンが消えた後に現れたのは、さっきまで楽しく談笑していた仲間の身体でできた血と肉片の絨毯だったのだ!

「うわあぁぁぁぁぁぁっ!!?」

「みんなあぁぁぁぁぁっ!!?」

「叫ぶ必要はない。悲しむ必要もない。なぜなら……この後、お前達も全員こうなるんだからな……!!」



「一番乗りもらった!!」

「ぐわっ!?」

 残っていた団員に飛び蹴りをかましながら、ダイナミックに砦に入って来たのは大きな長方形の箱を背負ったケントベッローザ!後からオルコ、トゥレイターと続く。

「殷則は?エレシュキガルは?」

「上だ。ここまで近づけばわかる……上からエレシュキガルの気配がする」

 オルコは一瞬だけ眉間にシワを寄せ、天井を睨み付けると、すぐに階段を探し始め、そしてすぐに見つけた。

「あそこから行ける。行くぞ」

「そうしたいのは山々やねんけど、ワイはここでお別れや」

「ケント!?」

 トゥレイターがケントベッローザの方を向くと、彼は大柄な男を、ナベシマを真っ直ぐと見据えていた。

「というわけで、先に行ってくれや」

「……わかったわ」

「武運を祈る」

 促され、メルヤミ達は上に。

 残ったケントは再びナベシマと遺跡ぶりに対峙した。

「まさかあの傷で生きているとは……どうやった?」

「教えるか!お前はワイに負けた言い訳だけ考えてればいいねん!」

「オレは無駄なことはしない主義だ」

 そう言いながら、ナベシマは懐から短剣を取り出した。



「殷則……!」

「やあ……また会ったね、古代人」

 上の階にいたのは、この戦いの元凶であるストーンソーサラー殷則!オルコとトゥレイターに囲まれても取り乱すことなく、落ち着き払っていた。

「エレシュキガルを返せ」

「いいよ、もうわたしには必要ない」

 オルコの要求に素直に応じ、札の張り付けられていない魔石を投げ渡した。

「……確かに」

「君達が追って来るのはわかっていたから、焦ったよ。でも間に合った」

 殷則は不敵な笑みを浮かべると、上を指差した。

「わたしの欲しいものは手に入った。正確にはもう少し熟成させないと駄目だけどね」

「いや……貴様のような小悪党が手に入れられるものなんてない。メルヤミ」

「はい!」

 オルコの意図を察したトゥレイターはさらに上に。殷則はそれに対し、何も行動を起こさなかった。

「止めなくていいのか?」

「それはこっちのセリフだ。お嬢様を行かせていいのか?黄泉より還ってきた我らが頭領は強いぞ?」

「あのお嬢ちゃんも強い」

「それは結構。大事に遺体を保存したせいか、わたしの才能があり過ぎたせいか、思いのほかしっかりと生前の記憶が残っていて、困っていたんだ!お嬢様と戦い、闘争本能に身を任せれば、わたしの人形になるまでの時間を短縮できるかもしれない!」

 殷則は都合のいい計画を口にして、勝手に上機嫌になっていった。

 それがオルコには不快で堪らなかった。

「我は過去の人間、あまり現代には干渉したくなかったんだが……やはりお前のことだけはきっちり殺しておかないとダメだな……!」



「この上は屋上……そこに!!」

 メルヤミトゥレイターは再び外に。

 開けた屋上にいたのは、大きな椅子に腰かけた赤黒い異形の男であった……。

「あなたが……不死の怪物……!!」

「ちょっと死んでいる間にそんな名前で呼ばれるようになったのか?まぁ、死の縁から蘇った俺に相応しい異名か……このマゼフト・テュシア様にな……!!」


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