そっくりだから令嬢の代わりに学園に通ってもらいたいとおっしゃいますが、私平民ですよ?
「療養が済むまでの期間で良いのです、どうか学園に通っていただきたい」
「はい?」
目の前の整った服を着ている老齢の男性の言葉に少女はただ困惑している。
彼女の名はマイネ。
普通に暮らしている平民の少女であり、目の前にいるのはどう見ても平民の彼女が会って話す機会もない貴族の執事である。
「えっと、私に貴族の学園に行ってほしいって事ですか?」
「その通りです」
「私平民ですよ? 無茶な事言ってるって思いますよね?」
「重々承知しております」
「私がそちらのお嬢様にそっくりと言われましても、それに療養するなら治るまで待つわけにはいかないのですか?」
「それだと出席日数が足りなくなり、アイネ様は留年される事になってしまうのです、それは旦那様も奥様も避けたいそうなのです、公爵家の娘が留年ともなれば世間体もありますので」
「そう言われましても」
マイネは困っている。
話によると目の前の老齢の男性が仕えている公爵家の令嬢が病に掛かってしまったらしく一命は取り留めたが数カ月は安静にしなければならず、現在別荘で療養している。
しかし数カ月も学園を休む事になってしまうと出席日数が足りなくなり留年する事になってしまう。
公爵の令嬢が留年したとすれば他の貴族達に何を言われるかわかったものじゃないと公爵夫妻はどうにかして留年せずに済む方法を考える。
すると何の偶然なのかその公爵令嬢アイネとそっくりと言ってもいい平民の娘を見つけた事で夫妻はその娘を代わりに学園に通わせて娘の留年をどうにか回避しようと考えたのだった。
そして現在の状況に至る。
「貴族様方にも大変な事情があると言うのはわかりましたけど、貴族様方が通っている学園に通うって事ですよね?」
「はい」
「つまり、勉強するって事ですよね?」
「はい」
「ちなみにお嬢様の成績は?」
「上から数えた方が早いくらいには」
「平民の私で本当に大丈夫ですか!?」
マイネは声を上げる。
どう考えても無理だと平民の彼女でも理解できるからだ。
「どう考えても無理ですよ、勉強した事もない平民の私が貴族様の学園に通うなんて、むしろ成績が急に落ちて逆効果になりますよ」
「もちろんその点も考えております、我々が全力でサポートしますので、どうかあなたにも頑張っていただきたい」
「勉強した事ない私にいきなり貴族の勉強やマナーを覚えないといけないなんて、本当に大丈夫かな」
「と言うよりも話を聞く限り協力していただける感じなのですが、協力していただけるのですか?」
「貴族の頼みを平民が断ったら何されるかわかりませんし、協力はしますよ」
「ありがとうございます、我々も全力でサポートさせていただきます」
老齢の男性が頭を下げるとマイネはまたも慌てるのだった。
それからマイネは馬車に乗って貴族の屋敷に向かいそこで貴族の勉強やマナーを受ける事になった。
屋敷に着いてマイネは二人の男性を紹介される。
学園でアイネの付き人として通っている二人だった。
「やあ、僕はルイ、よろしくね」
「レイズだ、俺達はアイネ様の付き人をしている」
二人の付き人はそれぞれ挨拶をする。
ルイは明るい感じでレイズは冷静な感じである。
「マイネです、お二人が私のサポートをしてくれると考えて良いのですか?」
「ああ、そう思ってくれ」
「君からしたら災難だけど、どうかよろしく頼むよ」
「やっぱり、お二人も無茶な話だなと思ってますよね?」
「ああ、いくらそっくりだからって平民に貴族の代わりをさせるなど、旦那様も奥様も何を考えているのか」
「うん、正直僕も無茶だなって思ってるけど、マイネちゃん本当にアイネ様にそっくりだね」
「そんなにそっくりですか?」
「ああ、双子の姉妹かと思うくらいにな」
「そうなんですか、えっと今から勉強をするって事ですけど、学園はいつから通うのですか?」
「一週間後だ」
「え?」
レイズの答えにマイネは固まる。
「一週間で貴族の勉強とマナーを覚えて学園に通う、しかもアイネ様は成績が良い・・・・・・あの、詰んでません?」
「お前の言う通り、俺もそう思う、だがやらなければならない、俺達も死に物狂いでサポートする、だからお前も死に物狂いでやってくれ」
「わかりました、不安しかありませんけど」
こうしてマイネの勉強が始まる。
一週間しかないため事情を知っている先生方も詰め込みでマイネに教える事になる。
やはり平民の娘に貴族の勉強やマナーを教えるのは無理があったのか最初の一日は詰め込みでたくさんの事を一度に教わったため苦労していたが、二日目にして一変する。
「それでは、昨日の基礎から始めます」
「えっと、基礎はもう覚えたのですけど、次は何をすれば良いのですか?」
「え?」
貴族のマナーを教えている先生がマイネの言葉に溜息を吐く。
「あのですね、一週間しかないから次に進みたいと言う気持ちもありますが、基礎をしっかりと覚えないと」
「いや、嘘じゃなくて本当に覚えたんですよ、ほら」
マイネは昨日教わった貴族の基礎のマナーを一通りやって見せる。
「昨日教わった基礎ってこれで全部ですけど、合ってますか?」
「・・・・・・嘘でしょ」
先生は驚愕している。
何故ならマイネは昨日教えた基礎をしっかりとしかも貴族令嬢と何ら変わりない完璧なできだったのだ。
「もう教える事はありません」
「え?」
二日目にしてマナーの先生はルイとレイズにそう伝える。
「ちょっと、どう言う事ですか?」
「彼女は貴族のマナーを一通り完璧にできています、学園に通っても問題ないくらいに」
「そうなのですか?」
「ええ、彼女は天才です、私がアイネ様に教えたマナーをたった二日で全て完璧に覚えましたから、もう私の役目は終わりです」
そう言ってマナーの先生は屋敷を後に去るのだった。
それは他の先生方も同じだった。
勉学だけでなく剣や弓などの武術、ピアノやバイオリンなどの楽器、さらにはダンスなどもアイネが受けていた勉強を全て受け全て完璧にマスターしたのだった。
ルイとレイズも彼女の才能に驚愕していた。
「驚いたね、マイネちゃんこんなにできるなんて」
「ああ、予想外な結果だ」
「僕達からしたら嬉しい誤算だけどね」
「そうだな」
「あ、マイネちゃーん」
「あ、ルイさんにレイズさん」
「マイネちゃん凄いね、どんどん覚えちゃうんだもん」
「何故、そんなにすぐ覚えられる?」
「えーと、私昔から一度ちゃんと教えてもらったらすぐにできる子だったみたいで、貴族の勉強も教えてもらったし私自身貴族の事について色々知れたから面白くなって自主的に勉強したら気づいたら全部覚えてましたね」
「もしかして、マイネちゃんって今まで勉強できる環境や機会がなかっただけで、実はとんでもない天才じゃ」
「みたいだな」
「おそらくだけど、一教えたら十覚える気がする」
「ああ、これなら一週間で間に合うし旦那様も奥様も安心できるだろう」
「そうだね、取りあえずマイネちゃんお疲れ様、後はゆっくり休んで」
「いえ、まだですよ、肝心な部分ができてません」
「え?」
「何だそれは?」
「アイネ様自身を演じる事です」
レイズの疑問にマイネは答える。
「顔がそっくりで勉強ができても私とアイネ様では性格が違います、学園に通って性格が違っていたらアイネ様と親しい者達ならすぐに私が偽物である事がバレてしまいます、そうなったら元も子もありません」
「なるほど、確かにその通りだ」
「ですから、お二人が教えてください、アイネ様の性格や話し方や好きな食べ物や嫌いな食べ物、よく言う口癖や何かしらの動きの癖などもあったらそれも覚えた方が良いですね、とにかく大きな事からどんな小さな事まで全部です」
「うわぁ、マイネちゃん意外と仕事は完璧にこなすタイプでもあるんだね」
「だが俺達がからすればありがたい、ただ」
「マイネちゃん、アイネ様の影武者にでもなるつもりなのかな? と言うかアイネ様よりも成績が上になる可能性もあるんじゃ、そうなるとある程度抑えてもらった方が良いのかも」
「だが、彼女が本気でアイネ様の代わりを務めようとしているなら俺達も本気で彼女のサポートをするだけだ」
「ルイさん、レイズさん、いよいよ最後の仕上げですよ、アイネ様が復帰するまで完璧になりきってやりますよ」
こうして平民の少女マイネが貴族令嬢アイネが復帰するまでの間だけ代わりに学園生活を送る事になりその学園で色々な事に巻き込まれる退屈しない学園生活になるのだがそれはまた別のお話。
読んでいただきありがとうございます。
主人公が学園に行ったらどんな物語になるのでしょうかね。
面白いと思ったら他にも作品を投稿しているので良ければそちらもどうぞ。
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