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丁寧すぎる!

 皆さんは敬語をどうやって習得したであろう?


 学校の勉強?


 親の指導?


 はたまたテレビから?


 私はテレビと親からのハイブリッドであった。


 ニュース番組はNHK。


 親の仕事の際の敬語。


 それらを聞きながら育った私は、「敬語問題? 得点源だね!」といいきる国語少女に成長した。


 大人、主に教師に丁寧な敬語で接し、授業で興味を持ったところはダッシュで仔細を聞きに行き、先生の話を楽しそうに聞く。


 先生は往々にしてこういう生徒が好きである。たぶん。


 少なくとも、敬語がしゃべれる、というだけで大人からの受けは大変よろしい。


 私はおおむね大人から、特に国語関係の教師と、近所・親戚のおじーちゃんおばーちゃんから受けが良かったのである。


 ところが私が初めてちゃんとしたお仕事に就いた時のことだ。


 案内サービスプラスお悩み相談、のような仕事だと思ってくれればいい。


 上司が一人、先輩が二人。ちなみに全員年上。


 ということで私の敬語はフル装備。


 ぼちぼちやってくる相談者の話を聞いていた日々の合間だった。


 「湯兎さん、敬語が丁寧すぎるね、もっと崩せない?」


 ……。


 …………?


 崩す、とは?


 「え、丁寧すぎ、ですか……?」


 「うん、丁寧すぎるよ。ちょっと硬すぎる」


 かたすぎる、とは。


 私は頭中をはてなにしながら「努力します」みたいな返事をしたと思う。


 結局配置換えでその職場には一年もいなかったが、敬語に自信を持っていただけに、衝撃的なリクエストであった。


 そして次の職場ではアテンドの仕事。丁寧な敬語むしろ歓迎。


 私はやっぱりかわいがってくるおじいちゃんおばあちゃんのアテンドをしながら時々「丁寧すぎる」のもやもやを引っ張り出して見ていたのである。


 さてさらに次の職場のことである。


 お仕事内容は小学生の子どもの学習の手伝い。小学生をメインにした博物館にいた感じだと想像してくれえればよろしい。


 展示室で子どもの学びの手伝いをし、実験室で実技を見守り、時々けがをしないように修正。


 子どもたちの見守りをする人たちはほかにいる。私はサポートメンバーで、あちこちにちょこちょこ顔を出していた。


 さて、そして、これがきた。


 「湯兎さんの敬語、いいんだけど丁寧すぎて。もうちょっと崩せない?」


 崩す、とは!


 上司のフォローをしよう。私が相手をしていたのは小学校、特に低学年である。


 今からして思えば、確かに私の敬語は難しかったかもしれない。


 が、私もそれは気にして、簡単な言葉になるように気を付けていたのに、いたのに……!


 「敬語を崩す」とはなんぞ、とそれこそネットで検索してみたかった。どこで! どう! どの敬語を! 普通語にしろというのだ!


 私は内心で「わからん!」とちゃぶ台をひっくり返した。


 表ではやっぱり、「努力します」とか言ったと思う。


 ……これも今思えばなのだが、私はここで聞けばよかったのである。「崩す」ってどういうことですか? と。


 しかし心の目にぶあつーいフィルターがかかっていた当時の湯兎にはそんなことはできなかったのである。


 心のフィルターはまた今度の話である。


 これら「丁寧すぎる!」と言われた原因は、湯兎の持つ最大の特性、自閉症スペクトラム障害(以降ASD)によるものである。


 ASDの人たちは、もちろん人にもよるが変わった話し方をする。ことが多い。


 よく言われているのが「相手の気持ちを考えられない」というやつであるが、ほかにもわかりやすい例として。


 朝の挨拶は何が何でも「おはよう、いい天気ですね!」とか。


 セリフをそのまま読み上げているよう、だとか。


 漫画やアニメのキャラのような言葉遣い、だとか。


 「あ~、あの人中二すごいね~」なーんて言っている隣のクラスの子がASDだったりするのである。


 湯兎の場合、幼少期からインストールされていったNHKのニュースの敬語と親の敬語がびっくり融合を果たした結果、「丁寧すぎる敬語」になってしまったのである!


 親は恨まぬ。


 敬語で助かってきた場面は多い。


 特に意識せず言葉遣いを切り替えられるのは大きかろう。


 しかし……しかしだ。


 発達障害かどうかを確かめるテストの結果にまで「年齢の割には敬語が丁寧すぎると感じた」と書かれてしまうと……。


 こう、なんだろう……疲労感のようなものがずぅんと……肩に乗ってくるのである。


 くすん。



今回出てきた症状……ASD 対人関係・コミュニケーションの苦手

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