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運動オンチではない

 前話では湯兎がとても運動が苦手、ととれる文章を書いた。


 書いた時は湯兎も納得していた。


 でも、数日たって、納得できなくなった。


 だって、私は、そんなに、運動オンチでは、ない!!


 なので今回はちょっとは運動ができる湯兎を書こうと思う。


 さて、では小学校のころである。


 湯兎はとても活発な子供であった。


 冬にあった森林学校(たぶん)では源流探検で凍った川の上の岩をひょいひょい跳んで先生の肝を冷やし。


 夏にあった海への遠足では身長の倍はあろう岩山に上ってやっぱり先生をはらはらさせ。


 運動場周回くらいは楽勝な一輪車で中休み爆走し(停止もバックも何のその)。


 男子に混じって休み時間ごとにドッチボールに精を出し(女子は私だけ)。


 ノートにいたずらされて、犯人の男子たちを追っかけ校舎を走り回ったり(捕まえられなかったので先生に泣きついた)。


 近所の子どもたちとおいかけっこをしてこけて外科にお世話になり(小学校低学年から高校までお世話になった)。


 学校の課外授業で傷口を縫うようなけがをして「()()()()()()()()がありますので」と言って先生を絶句させ(親も絶句した。この発言のおかしさは大人になってわかった)。


 ローラースケートで近所をちょろちょろ爆走したり。


 初めてのスケートで器用にくるくるコースを巡ったり(多分、周りに人がいなければ半回転ジャンプくらいは挑戦した)。


 実に実に、実に活発な子供であった。


 たぶん、湯兎は怖いもの知らずで、かつ体幹――バランス感覚に優れているのであろう。


 たとえばダイエットスリッパというものがある。


 知らない人は検索しておくれ。


 湯兎はそのダイエットスリッパを初めてはいて、てっけてっけ普通に歩けたのであるから、大人になってもバランス感覚は衰えていない。


 ちなみに親はどっちも歩けなかった。ふふん。


 さて中学校である。


 そう、今までのすべては小学校でやったことだ。


 湯兎は小学校高学年で小説にはまり、自分で書くことにもはまり、読書少女にジョブチェンジしていたので、中学校以降のエピソードは体育の時間が多い。


 そして、運動が下手な湯兎はこの辺から出てくる。


 テニスの授業、卓球の授業、ソフトボールの授業。


 湯兎は、ボールを打ち返すのが非常に上手だった。


 振れば当たる。


 それくらいの感覚でぽんぽんボールを飛ばしていた。


 ただし、振れば当たってもコートの中にボールが落ちるかは別問題である。


 また、テニスの場合は、打ち返されたボールの着地点に「ラケット」ではなく「自分の体」を置いてしまっていたため、ワンバウンドするくらいのタイミングで一歩二歩横にずれる必要があった。


 おそらく、テニスのラケットは湯兎が扱うには「長すぎる」のであろう。


 湯兎の乏しい空間把握能力がラケットのガットの位置までおよんでいないのではなかろうか。


 打ち返せるけど、下手。


 そんな感じ。テニスは。テニスは!


 反射神経は非常によいので、前衛に回ったときはなかなか成績が良かったのも付け加えておく。


 平等に書こう。湯兎にはどうしても苦手な競技もあった。


 バスケと、ダンスである。


 バスケはマルチタスクの下手さが出た。


 ボールを手でバウンドさせながら、相手の位置を見て、仲間の位置を見て、ついでに自分が何秒ボールを持っているかも把握。


 無理である。


 ボールをバウンドしながら目の前の相手を見るだけで精いっぱいである。


 ボールをパスできる仲間どこ? 探せんわ。


 今ボールを持って何秒目? 知らんがな。


 ついでにやっぱり空間把握能力のなさで、ボールをゴールに入れるのに難儀した。


 この辺は授業を経るにつれ、反復練習でなんとかなったけど。


 ダンスはもう、湯兎の苦手が詰まったような競技だった。


 湯兎、実は、目の前の人がとったのと同じポーズをとることができない。


 目の前の人が鏡向きのポーズではないならもうお手上げだ。


 リズム感覚はいい。いいのだが、それに手足がついていかない。


 そもそも手と足を――手と足は通常同じ動きはしないが――別のポーズをとらせることもできない。


 これもやっぱり反復練習の問題なのであるが、湯兎は定型発達の人より、三倍、四倍、五倍、ポーズを覚えるのに時間がかかってしまうのである。


 しかし中学高校、そんなことはわからない。


 周囲ができることは分かる。


 できるのだから、自分もできるはず――できないなんて言えない。


 そんな気持ちで必死にダンスの練習に食らいついていた覚えがある。


 ……運動会の出し物で、わがクラスが「創作ダンス」になったときの絶望、よーく覚えているとも。


 こんな感じで、湯兎は運動オンチではない。


 できない運動には必ず訳があるのだ! と書きたくて書いた話であった。




今回出てきた症状……ASD 空間把握能力の欠如、ミラーニューロンの働きのにぶさ

         ADHD 結果を考えない突発的な行動、危険な遊びが好き


 ASDは体幹がないといわれるが、湯兎は例外らしい。

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