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昔、空は白かった

 青い空、という表現がある。


 表現というより当たり前の事実。


 「空の色は何色?」「青ー!」と返ってくるくらいには当然ではなかろうか。


 若干、「空色ー!」と返ってくることもあるかもしれないが。


 幼い私にとって、空の色は青ではなかった。


 白色だった。


 正確には白に一滴水色を落とした、そんな色をしていた。


 小学校や中学校の運動場は光っていた。


 真っ白に、ぎらりんと、凶悪なくらい光って運動会の練習をする私を襲っていた。


 スポットライト並みの光である。


 私は目を細めて細めて、光にとけこんでしまう走者を応援していた記憶がある。


 私にとっては白い空も、光る運動場も当たり前だった。


 白い空は「昔は空気が澄んでいたのかな」くらいに思い、運動場はおかしいとも思わなかった。


 それが万人にとっての当たり前ではないと知ったのは、二十歳をとうに過ぎた日だった。


 眼鏡を新調するためにメガネ屋に行って、雑談交じりに世界がまぶしいことを言った。


 運命の出会いだった。


 調光レンズ。


 紫外線が当たると暗く色を変える、簡単に言えば家では眼鏡、外ではサングラスになるレンズを使った眼鏡に、私は出会ったのだ。


 世界が一変した。


 比喩ではない。本当に一変した。


 白い空は青い空になり、直視できなかったアスファルトは普通に歩けるようになった。


 信号が見えるようになり、木々は光らず、緑色にてかっていた。


 唖然とした。


 これがみんなの見ている世界?


 では、今まで見ていた世界は自分だけしか見えていなかったのか?


 今なら「それはそれで貴重な世界」と思えるが、当時はもう、言葉もなかった。


 世界が見える。


 夏なのに光っていない。


 景色に色がある!


 覚えていないが、ひょっとしたら眼鏡を初めてかけた日もこんな感動を覚えたのかもしれない。


 「過敏症」の中の「視覚過敏」。


 それが私にとっての空が白かった理由である。


 視覚から入る光の刺激を鋭敏に感じすぎてしまう。


 私の場合は視覚に限らないが、その話はまた今度。


 今、私の空は青い。


 それはとてもうれしいことだと思う。


今回出てきた症状……過敏症

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― 新着の感想 ―
[良い点] こう言っては失礼かもしれませんが、とても面白かったです。 自分にとっての常識が他人にとっては違う、ということを改めて感じました。 特にこういった「感覚」は他人との比較が難しいですからね。 …
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