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見えているけど,ないのと同じ

 少しだけ前話の内容を引き継いだ話である。


 湯兎は自閉症スペクトラム障害である。


 その特徴の一つとして「視覚優位」というものがある。


 優位。なにより優位か。


 聴覚である。


 平たく言えば、言葉で説明されるより、一回実物を見たほうが理解できるのである。


 これは定型発達の人にも言えることである。


 だってこんなことわざがあるではないか。「百聞は一見に如かず」。


 ASDの人は定型発達の人より少し話を聞いて理解するのが苦手なだけである。


 その少しで相手とすれ違ったりするわけだが。


 私ももれなく視覚優位な傾向がある。


 たとえば小学校、工作の授業があったとする。


 材料はこれで、最初にこうしてからこうして、ここまで進めてね!


 湯兎はその説明を聞いていない。


 配られたプリントなどを見て、さっさと作業を進めている。


 だって説明を聞いてもさっぱり理解できないからだ。何をどうしてどうするって? ああこれを……え? 先生どうしてたの?


 説明を聞くより資料を見たほうがずっと早い。


 たとえば中学校、歴史の授業の時である。


 この国の南西にはこの国があって、東にはこの国があって、こうでこうで仲が悪くて北西にある国が……。


 ごめん先生、位置関係がまるでわかりません。地図ください。


 なぜほかのみんなは理解できるのか、それが理解できない。


 ちなみに歴史と地理(ついでに理科)の授業の時は、教科書より資料集を読み込んでいた。


 資料集はカラーで地図も図表も載っていて大変わかりやすく、ついでに楽しかったのである。


 ちなみに資料集を読んでいるときは先生の説明は聞き流している。ごめんよ先生。


 とまあ、視覚優位とは私にとってはこういう感じであるのだが。


 これが前の話とどうつながるの?


 こうつながる。


 ものを片付けて見えなくなってしまえばないのと同じ。


 だからあえてものをみえるところに置く。


 そうしたら存在を忘れることがなくなるから!


 しかし、そうするとある時、私の視覚優位が火を噴く。


 ものが多すぎる! 視覚情報おおすぎる! 処理できません、シャットダウンします。


 目に見えるものが多すぎて、頭が情報を処理しきれなくなってしまうのである。


 こうなると湯兎はまた、あることがわからなくなる。


 それは変わらずそこに存在している。


 見えているのである。


 けれど、湯兎の脳は、見えているのにわからない、つまり「見えているのにないのと同じ」になってしまうのである。


 原因ははっきりしている。視覚情報が多すぎるから。


 では、減らせばよい。


 しかし湯兎は捨てられない人だ。


 では……どうなる?


 「そこにあるのにない」、つまりそのたくさんのものを完全スルーするようになるのである。


 汚いな、と思ってもスルー。


 片付けないとな、と思ってもスルー。


 整理整頓しなければと思っても頭のどこかが止まっているみたいに、行動に移すことができない!


 とても不思議だ。脳って不思議だ。


 なぜこうなるのかはやっぱりわからない。


 そうして親に「いい加減にしなさい」みたいに言われて、されど動かず。


 結局親と一緒でないと片付けしないわがまま湯兎が爆誕する。


 とんでもない苦労をかけている。ごめんなさい。


 ちなみに部屋で散らかっている確率が一番高いのは書籍だ。


 シリーズを丸ごと引っ張り出して、でも読んだ本を片付けずにそのままタワーにする、なんてことがよく起こる。


 さらにちなみに、湯兎がうつ病になり文字が読めなくなってからはこの悪癖は減った。文字がしっかり読めるようになればまた本のタワーが乱立するのだろうか。ちょっとわからぬ。


 なんだかんだ、言葉で説明するより目で見える情報のほうが理解しやすいのが視覚優位。


 そして、あまりに視覚情報がおおくて処理落ちするのも視覚優位なのである。


今回出てきた症状……視覚優位

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