マルチタスクは天敵である
湯兎は料理をしない、と前に書いたことがある。
撤回はできぬ。湯兎は料理をしない。
正確には、できない。
「料理をすること」が、湯兎の能力の限界を越えているのだ。
といってもなんのことかわからなかろう。
どのへんが難しいのか、順を追ってみてみよう。
まず、料理をするのは料理の候補を決めるところから始まる。
まず、ここで湯兎はけつまづく。
え? 何を作るの? え? 一汁一菜? え? 作るの一皿じゃないの?
残念ながら、たいていの食事はワンプレートではすまぬ。
ワンプレートで出してもよいが、その上にはせめて三種類くらいは料理がのっかっているものである。
ここで丼ものを選択できるなら楽である。
もたもたメニューを決めたらはい、次。食材の買い出しだ。
食材とメニューが逆になる、というか逆にできる人もいるだろうが、湯兎にそんな高等テクニックはない。
冷蔵庫を開いて、冷蔵庫の中身からメニューを決める、なんてできないのだ。
だから買い出し。
頭真っ白になる迷宮スーパーへレッツゴー。
ここまで読んでくださった皆様にはわかると信じる。
買って帰ってくるだけで多大なダメージである。
へろへろになって戦利品を持って帰って、さあ調理。
……ができたらよいのだが。
湯兎の精神的には、買い出しに行って帰ってくるという作業でもうキャパオーバー、本日閉店、がらがらぴっしゃん。
三時間くらい仮眠をとれば復活するが、まあ、現実的ではない。
……というわけで、現実はここでミッション失敗! になるが、調理の時は何が起こっているのか、続けてみてみよう。
調理はだいたい、何かを切るところから始まる。
野菜を切ってー、お肉を切ってー、もう切るものないね、じゃあ次はー、えーと……。
そう、焼くんだからフライパンに火を入れてー、油しいてー、熱くなるまで待って……。
よし炒め終わり、お皿に移してー、次はお味噌汁!
お分かりだろうか。
このウサギ、とても非効率的なことをしている。
食材を切るのとフライパンを温めるのは本来同時進行でできるのだ。
それだけではなく、食材を炒めるのとお味噌汁を作るのだって、同時進行でできるのだ。
だが、湯兎にはできない。
料理は、どうしてもできない!!
湯兎が食材を切るのとフライパンを温めるのを同時にしようとするとフライパンからは煙が上がり。
食材を炒めながらお味噌汁を作ろうとすると、お味噌汁を沸騰させ。
失敗に気づいて焦った湯兎は慌てて体を動かし、たぶん腕か足をやけどする。
そしてそれ以前に、食材の量を考えて切らなかったせいでこれ何人分? 家族で何食分? という量のご飯が生成される。
二桁はやった失敗だ。
三桁になる前にあきらめた。
だから湯兎は料理をしないし、できないになる。
湯兎が作れるのは丼ものか、目玉焼き、スムージー、それからヨーグルトに何かを盛るくらいである。
それかお茶だ。これは家族より上手だもん。
家事は多くが同時進行で行われれる。
今日の家事は朝ごはん作った後で洗濯ものして、その間に机片付けて、銀行いって、洗濯もの干して。
考えているのと同時に体を動かしていたら、それだけですでにマルチタスク。
また、家事の中で一番同時進行が多いのが、たぶん料理という行為だ。
なにしろ料理の中にすでに食材をそろえること+調理することの二種類が混ざっているのである。おそろしや。
湯兎はマルチタスクが苦手だ。
目に入るものにしか注意はいかない。
洗濯ものをしても、終了の音が鳴ってすぐに干さなければ、きれいさっぱりと忘れ去る。
で、今日の家の仕事終わったよえっへんほめて! とやっているときとかに発見されるのである。
湯兎はマルチタスクが苦手だ。
苦手なだけで、かろうじて、できないわけではない。たぶん。
今はホワイトボードにやらなければいけないことを書いて、やったら横線で消す、という方法でやることリストを可視化し、せめて家事だけは! とがんばっている。
買い物メモと同じく、やることリストホワイトボード版は実によく生活にはまった。少なくとも、やることを覚えていながら家事をする、というマルチタスクはしなくて済むようになった。
が、これでは料理は作れぬ。
どうしたらマルチタスクできるようになるのかなー、と、どうしたらマルチタスクを単純作業にできるのかなー、と、二つの問題を考えつつ、ひとまず私は、料理を作る親の横に陣取っている。
たぶん、見て盗めはしないだろうけど……。
今回出てきた症状……ASD ワーキングメモリ、短期記憶の働きが弱い(マルチタスクが苦手)
対処法……タスクを可視化
料理ができるようになる対処法を募集しています。




