味覚過敏だけど
湯兎は味覚過敏である。
濃い味が苦手で薄味が好き。
サラダは基本ドレッシングなしで食べるが、キャベツと玉ねぎの薄切りは辛さで泣く。
ちなみにラディッシュとブロッコリースプラウトにもやられた。
わさび、からし、さんしょうなど一般的な「辛い」も受け付けぬ。
「おいしくない」が誰にとってもおいしくないとは限らぬが、「おいしい」と思ったものはたいてい誰にとってもおいしい。
そんな「何かのセンサー?」と言いたくなるのが湯兎である。
で、あるのだが、その謎センサーは時々誤作動を起こす。
私には、味の違いがわからぬ食材があるのだ。
もっとも基本的な食材。
食材というのもはばかられる人間にとって当たり前のそれは。
水、である。
そう、湯兎には水の味がわからぬ。
もっとわかりやすく例えれば、水道水と天然水の違いがわからぬ。
ペットボトル、湧き水などの天然水が周囲から「わあ、おいしいねー!」という評価を受けても首をかしげるだけである。
水は水。
おいしいかおいしくないかあるの? と。
厳密にいえばわずかな違いはある。
薬が混ざっている水道水は、喉を通る時に舌にちょっとしびれが残る。
天然水はそれがない。
以上。
ただ、それが「味」にはつながらぬ。
家族が「おいしい」と飲んでいる中,自分だけ首を傾げているのはなかなか悔しいものがある。
先日興味深いことがあった。
湯兎はかなりお茶が好きである。
緑茶だけでなく、和洋のハーブティーやフレーバードティーも好きである。
ストレートの紅茶だけ苦手だ。味が濃いゆえにミルクを混ぜなくては飲めぬ。
野草茶などは自分でブレンドする。
湯兎のいれるお茶はおいしいと評判である。えへん。
閑話休題。
先日、贔屓の茶葉専門店で「闘茶」の催しがあったのだ。
闘茶とは、出されたお茶の銘柄をあてる遊びである。似たところで聞茶がある。
で、だ。
てってけ遊びに行った私は、闘茶で見事、全部外したのだ。
出たお茶は紅茶、日本茶、フレーバードティーから一つずつ。
選択肢はそれぞれ三つ。
適当に選んでも一つは当たってもいいのに、全滅。
普通に悔しい。
それ以上に驚いた。自分が味覚過敏だと自覚があるからだ。
だのに、飲んだことのあるお茶の銘柄を三つとも外した。
うーむ、と考えた。
出た結論はこれだ。
「湯兎はご飯の味を記憶できない」
人の顔を記憶できないのと一緒だ。
一緒にしていいのかわからないが、一緒だということにする。
「あっ、これ昔食べたことのある味……」とか「懐かしいなあ、このお茶おばあちゃんが好きだったんだよ」とか。
そういう、「味の記憶」が湯兎にはできないのではないか、と。まあ、そう思ったのだ。
思えばお茶をいれたときも、「おいしいかおいしくないか」だけだ。
飲んで不愉快でないからおいしい。
不愉快だからおいしくない。
不愉快だったから、次はこの銘柄は買わない。この組み合わせはなし。もっと茶葉の量を減らそう。
では他人がいれたお茶の味を飲んで、同じお茶をいれられるか? ときかれると、そういえばできないかもしれない、とこの闘茶で初めて気が付いた。
謎センサー搭載の湯兎、実は快・不快で判断していた説。
なかなか興味深くはなかろうか。




