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どんな時でも初対面

 私には人の顔がわからぬ。


 目の前にいれば、目と口と鼻がくっついているのがわかる。


 男女の別くらいはつく。


 美醜もなんとなくわかる。


 推定年齢はいつも当たらぬ。


 名前は聞いた二秒後に忘却する。


 そして何より、二度目に会ったときに「あ、前に会ったことある人だ」と認識できぬ。


 人の顔がわからぬというより、人の顔を覚えられぬといったほうが正しいかもしれぬ。


 なぜできぬのか、そんなこと知らぬ。


 私からしたら「なぜわかるのか?」とみんなに尋ねたいのだ。


 どうやって人の顔を覚えているのだろう?


 一度目の人ははじめまして。二度目の人ともはじめまして。


 三度目の人は?


 三度目でもはじめましてだ。残念ながら。


 本当に、覚えられないのである。


 名前も忘却しているので、名前を聞いてもちっとも記憶にかすらない。


 仕事の時は大変であった……と苦労話はここまでにして。


 おそらく生まれつきの能力か何かで私は「人の顔を覚えるのが苦手」があるのであろう。


 なぜ苦手なのか?


 できないのではないのか?


 できないわけではない。


 証拠に、私は小学校中学校の時はクラス全員の顔と名前を一致させていた。


 なぜか。


 密度と、回数と、名札の問題である。


 私が小学生だった時、名札は健在であった。


 それはちょっと視線をずらせば話している相手の名前を何度も確認することができるということである。


 こと、ほぼ毎日顔を合わせる友達である。


 密度は十分。


 少子化の少人数クラスなこともあって、学年全員の名前を覚えるのはさほど難しくなかったのである。


 では中学校では、というと、中学校では制服に名前が縫い取られていた。


 小学校の同級生が繰り上がり、三分の一の名前をすでに知っている、ということも大きかった。


 ちゃくちゃくと名前を覚えていったが……。


 ここで「密度と回数と名札が大事」が満たせない世界が登場する。


 部活動である。


 私は運動部に所属していた。


 が、障害(当時は未確認)のせいなのか、生来の気質なのか、運動部なのに練習に出てこない幽霊部員であった。


 顧問も「大会の時に来ればそれでいい」とさじを投げたほどの幽霊っぷり。


 かつてのチームメイトに思う。


 本当に、ごめんなさい、こんな目障りなのがいて……。


 すっぱりやめればよかったのであろうが、私には「一度始めたものをやめる」という行動をとるのは非常に難しかった。


 こちらは100パーセント障害によるものである。


 その話はまた今度として。


 部活動で「密度と回数と名札」を満たさぬもの。


 先輩と、後輩である。


 最初に入部した時は先輩だ。


 二十人以上いる先輩方の名前を、あろうことか私は一つも覚えられなかった。


 部活をさぼって密度も回数も足りぬ。


 おまけに運動着には記名もない。


 無理である。


 覚えられるはずがない。


 ちなみに、この「覚えられない」は部活動から遠ざかる一つの原因であったのだが……。


 「私は人の顔を覚えるのが苦手です」「何度も名前を聞きます、ごめんなさい」の二言さえ言えれば、と思うが、過去には戻れぬ。


 経験として未来に生かすしかない。


 ではその経験則として。


 大事なのは、何度も言おう、「密度と回数と名札」だ。


 一度目でしっかり覚えたいのなら、名刺をもらうことだ。


 経験的に、相手が口頭で名乗ると右から左に名前が流れて消えていくが、名刺をもらうと何度も名前を確認できるせいか、比較的記憶に残りやすい。


 名刺がないなら何かに書きつける。


 それができない場合は素直に「覚えられない人なのです」と白状しておこう。


 二度目ましての時白状されるより、一度目で白状しておいたほうが心証がよい。


 お仕事だったらなおさらである。


 言わなかったらどんどん言えずに自分が苦労することになる。


 職場の先輩(名札はない)の名前すら覚えられない緊張感は……。


 経験した者にしかわかるまい……。


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