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退路確保(3)

 さて、ホルンがあの会議の動画をよこした理由を考えてみよう。

 聖王国の移民団は侯爵の領民になるわけではない。あくまで聖王国の領土拡大、ということらしい。

 だが、聖王国は本国に対して強い立場にある。来てほしくはないが来るなとは言いにくい。

 ならば、あまり近くに住み着いてほしくはないだろう。ならば、侯爵領の邪魔にはならず、彼らの納得できる候補地を推薦してやる必要がある。

 だが、侯爵領の人間たちは対岸の地理をどのくらい知っているのか。

 手持ちの幽霊で一番くわしいはずのカササギ準公爵の知識を調べても沿岸部しか知らない。その中でベストと判断したのがコケモモ村にとっては不幸なことに彼らの管理していたあの場所だった。

 ならばそれに準ずる場所を提案してやらないといけないだろう。

 準公爵の知識は俺より少しくわしいくらいだった。

 西に行けばこの村を通り過ぎれば次によさそうな平地は妖魔の交易都市の近くしかない。妖魔の商人マイヤーの店のある都市だ。何台あるかわからないがオートマトンと傭兵で厳重に守られているあそこを聖王国は攻めるだろうか。最終的に攻めるとしても根もおろさないうちにやるなら移民団と呼ぶべきでない軍団が必要になる。いきなりそんな大規模な遠征をするなら侯爵に対する連絡も違ったものであったはずだ。

 そこから西にいけば断崖絶壁と砂漠が延々と続いている。そのまま大陸の西の端をこえると年中あれている海が待ち受けていて、耐えきれない此岸の船乗りは海図を持っていない。

 東にいけば鬼人連合の土地だ。ここには絶壁とかぼそい道で此岸結ばれた地峡がある。人間たちは何度もここを通って攻め込んできたが軍隊は大軍でも少しづつしか阻止できないため、軍事行動は失敗の歴史しかない。東の樫鬼たちが侯爵領と戦えているのも、伝統的にそんな戦いの経験を積んだ民族だったおかげだろう。

 地峡を越えるとまた此岸と対岸を分ける海になる。聖王国はその海を挟んで対岸と対峙しているが、ここには妖魔の交易都市とそれを中心にした同盟部族が多数いるらしい。聖王国としてはいきなり力任せに行くならそこに上陸するはずだ。

 つまり、聖王国の移民団は足がかりとなる入植地がほしいということになる。

 俺なら、東の樫鬼から削り取った場所を勧めるな。毒を以て毒を制すだ。

 だが、それは聖王国側が拒否するかもしれない。何もない状態で敵襲の危険のあるところになぞいけないと言われて。

 そうなると、うちの村も危ないことになる。入り江があって水運の便があるし、欠点を言えば入り江の口の水深が浅いので侯爵領の港でみたような大型船は入れないくらいだが、沿岸移動の小型船なら問題はない。移民ののってくる大型船は侯爵領の港にいれてそこから小舟か陸路でここまでくればいい。

 そうなると、先住民が邪魔になる。

 オートマトンがいたとしても、この小さな村の脅威と此岸では敵のなさそうな聖王国の移民団とどっちを重く見るかはあまり考えたくない課題だ。

 ここを放棄する日までまだ数年はあると思っていたが、案外早いかもしれない。

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