再編会議(2)
「この鱗鬼さんは何者で」
ダラに聞かれるのも当然だろう。彼女に「夜明けの霧の声」のことは紹介できていなかったし、彼女も「夜明けの霧の声」のことは傭兵か何かだと思っていた様子がある。樫鬼の一族に鱗鬼がなんでいるのかというのはまず疑問すら覚えないだろう。
最初の飛竜だというと彼女は「へえー」とびっくりした。
「もしかして、タケト様が召喚なされたので」
否定しなかったら彼女はゴウラガのほうを向いて勝ち誇った顔をした。
「言っとくが、竜の民は魔王タケトの配下になったわけじゃない。竜祖様は今は氏族の頭ではないし、こいつは我々にも益のある取引だから同盟関係を結んだだけだ」
「へえ、へえええ」
構わず彼女は勝ち誇った。仲ほんとにわるいな。
「その同盟関係をもう少し硬くするための提案があるのだが」
大人気ない二人はほっておいて「夜明けの霧の声」は話を先に進めた。
このへんは魂なしとは思えない。自然発生しつつあるのだろうか。ロクザン師匠に今度聞いてみよう。
「聞こう」
「この蜘蛛は他にもいるか。いれば竜の民に貸し付けてくれ。管理は俺が引き受けよう」
これは嫌な予感が少しする。俺はゴウラガの肩をたたいた。
「この場の竜の民の代表はあんただ。今の『夜明けの霧の声』の提案について意見を聞かせてくれ」
「む」
さすがというか、ダラと大人気ないいがみ合いをしていた彼は我に返ってくれたようだ。
「そうはいっても、飛竜殿や他の主だったものに竜祖様を引き合わせ、相談をせねば決めかねる。そのまえにいくつか確認したいことがあるがよろしいか」
さすがは実務方のトップというか、そもそも貸せる蜘蛛があるのか、蜘蛛との意思疎通はどこまで行えて、どこまで頼むことができるのか、世話についてはどうなのか、そして繁殖力が強すぎることはないか、など生き物の面倒を見るのだということに留意したものだった。
大人気ない衝突が途絶えたので、それから話はトントンと進んだ。ダラの一族が人間とぶつかるときには竜の民も援軍を出す。敗走したときは奪回できるまでの避難を認める。もし、竜の民まで敗北するなら、その時はその時考えるしかない。
話し合いは遅い時間までかかった。東に向かう交易隊は俺たちにかまわず出発したが、話し合いの参加者は翌朝にそれぞれの目的地に出発した。最後に決めたのが連絡の方法だ。結局、速度は劣るが隠密性を重視して足の速い樫鬼の誰かが遺跡と竜の民の一番近い村との間を行き来することになった。
蜘蛛の貸し出しは後でこの方法で返事がきて、使いの者に同行させて送りだすことになったが、遺跡に戻った俺たちはまた新たできごとに待ち伏せされていた。




