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再編会議(1)

「なるほど、タケト様のおっしゃりようはわかりました」

 ダラは雰囲気が変わっていた。良くも悪くも家庭の主婦という感じだったのだが、今は女族長の威厳と、それらしい衣装をまとっている。

「だども、わしらはコケモモ村の森番ですだ。竜の民には竜の民の、コケモモ村にはコケモモ村の森があって、これは助け合うこともございますが、一つになることはございません」

 ゴウラガに聞いてみると、彼も同じ意見だった。

「助け合うこともあれば争うこともある。コケモモの衆とはどちらかといえば不仲であったし、おたがいにあまりかかわらないようにしていた」

「へえ、飛竜様のご加護をかさにきていけすかねえ連中ってコケモモのほうでは思ってました。実際、竜の民は尊大でございましたよ」

 こりゃ無理かな。仲が悪いのはわかっていたのだが。

「我が氏族は飛竜殿の加護をかさにきた覚えはない。自然の王を戴いていた民であり、王の遺命で飛竜に守られていることを誇りとしている」

 ゴウラガも少しむっとして言い返す。

「そんならおらたちと同じだ。いずれ自然の王となっていただくタケト様からお預かりした蜘蛛の加護を得てんのがこの新しいコケモモ村だど」

 ダラとゴウラガの言い争いは収束しそうにない。頭をかかえていると、「夜明けの霧の声」がちょいちょいと俺をつついた。

「あの蜘蛛はなにか教えていただけるか」

 魔物の王から奪った彼女の眷属なんだが。

「あの糸は燃えやすいのか」

 最終的に、魔物の王と侯爵領の戦いがどうだったか、少し説明する必要ができた。

 燃えにくいことと、侯爵領で作られた融解液の効力の遅さ、ただしエリナが蜘蛛自身のより効果的な融解液を再現したことまで踏まえてどちらかといえばものものしい外見の鱗鬼は手をポンと打った。

「ああ、それは蜘蛛の大王の眷属と同じだ」

 蜘蛛の大王、というのは魔王の一柱だったらしい。彼が現役だった時代にはもう伝説の部類であって、少なくとも今のこのへんの住人には忘れ去られた存在のようだ。

 伝説であるが、最強の魔王の一角として此岸で対岸までとどろくほどの名をあげていたのだそうだ。対岸の魔王たちは彼女が海を渡ってくる日を想像して震えあがっていたとかなんとか。まあ、これは大げさなのだろう。

 だが、此岸には人間どもがいた。英雄が何人もいて、蜘蛛の大王の軍勢に激しく抵抗し、最後には魔王から奪った武器や、部下を駆使する英雄の中の英雄、「最強のラハン」とその軍勢に滅ぼされてしまった。さしも凶悪な人間たちでも、普通の武器や並みの英雄では勝てなかったといわれていた。

 魔物の王はこの蜘蛛の大王のコピーだったのではないだろうか。駄女神もいっていたじゃないか。最初から最強なら、手っ取り早く過去の最強の魔王のどれかの複写になるようなことを。

 力の内在化とはなにか、肉体とおそらく精神もつられて変形することを考えれば、正気を保つことなんかできなかったのじゃないだろうか。俺以前の三例すべての召喚が失敗した理由は、ここだったのじゃないろうか。

 そして此岸の女公爵が戦乙女ケイラを送ってきたのは、魔物の王が蜘蛛の大王と同じが似たようなものであり、勝ち目が見えていたからじゃないだろうか。

 言い争ってた二人が、いつの間にか俺たちの会話に聞き入っていたことにその時やっと気づいた。

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