交易
今後のこともあるので、ダラの集落まで「夜明けの霧の声」とゴウラガを送っていくことにした。
後の守りはスーハオに任せ、護衛にはゴーレム17号と顔だけ隠してもらったシュベイヒをつける。案内にはいつも彼らのところを経由して東の樫鬼たちに武器を運んでいる村の樫鬼たちにお願いした。ついでにそのまま先にいって納品するらしい。
行きは大丈夫そうだが、帰りは俺とゴーレム、シュベイヒだけになる。それだけだと戦力的に不安な面もあるので角三本もちの蛇を召喚した。スーハオが南方で狩ったもので一番強そうなやつだ。
魂なし召喚の維持コストだが、だいたいの計算ができるようになったので整理してみよう。
正確な数字が表示されるわけではないが、俺のレベルの二乗、これくらいが維持にさける魔力のコストだ。これは召喚とは別に考えていい。召喚はたまった魔力で行うので、全コスト使い切らずにためていけるのなら時間の問題になる。
コストは小動物は10分の1かそれ以下で済むが、人間くらいだと1、それより強い生き物だと大きさによって決まるようだ。今、護衛に呼んだ蛇の魔獣は人間三人分くらいコストがかかっている。
今時点なら12レベルなので144、ダラの集落の10人、シュベイヒ1人、行商人1人、ダラのところの蜘蛛で2人分くらい、蛇でおおむね3人分、「夜明けの霧の声」が2人分、小動物たちが合計で6人分、もっと召喚維持は可能なのだが、召喚したものたちも食わなければ死んでしまうことと、居場所を考えないと問題が起きるので不必要に増やすことはできない。
蛇の餌には森の小動物たちと、時々鹿あたり召喚して飲ませることを考えているが、これも一匹だからできることである。戦争に使うなら死ぬ分、終わった後に処分することで対応できるので数を一時的にそろえることはできそうだが、計画性をもってやらないと肝心なときに戦力になってないということもありうるのでなかなか魔王も難しい。
魔獣を扱うのは人間の召喚者をあつかうのとは違った。
人間にしろ樫鬼にしろ、命令を理解する能力があるので護衛につれていくときには「守ってくれ」で済む。
だが、魔獣はそもそもそんな慣習を持ってないことが多く、できる命令といえば「ついてこい」「あいつを攻撃しろ」「逃げてこい」など簡単なものだ。
ついてこさせる時も、少し離れてついてくるように命令してある。護衛は基本シュベイヒや17号に任せ、彼らの手に余る相手がでてきたらそいつに乱入させるつもりだ。
途中一泊をはさんで俺たちはダラの新しい拠点についた。
「これはすごいな」
ゴウラガが思わずそんな感想を漏らしたが、実は俺も同感だった。思えばダラたちを送り出してから。自分で来るのは初めてだった。
木々の間に白い糸の壁が張り巡らされている。これがぐるりと集落の周囲を囲み、木の上には足場がおかれて登れるようになっていた。ちょっとした城壁だ。
出入りは二か所、どうやらツタを編んだものに糸をからめたらしい門が作ってあり、これを門番の蜘蛛が閂かわりの糸をきったり張ったりして開閉するようだ。
通称隊の樫鬼たちはもう慣れっこらしく、足取りをゆるめることなく門にむかって手をふった。
門の上にいた樫鬼の召喚村人がうなずいて門番蜘蛛に合図を出せば、門はしずしず開いた。
二の足を踏んでいたのはゴウラガと「夜明けの霧の声」、そして俺だ。シュベイヒは二の足というより俺の護衛として警戒心を最大化していた。おもしろがっていたのは相変わらずうるさい十七号。
「こりゃあ、すごい」
開いた門の向こうには、出迎えにダラとおそらく俺の召喚した蜘蛛、そして樫鬼の魂なし村人が二人いた。




