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傲慢と報復(2)

 彼らは不意にやってきて村に乗り込もうとしたらしい。

 気づいた村人が阻止しようとすると嘲笑してずいぶん勝手なことをいいだしたそうだ。

 曰く、この村は自分たちが接収する。侯爵様のほうから許可ももらっている。村長も妖魔たちも納得済だ。逆らうと懲罰をくだすぞ、とでたらめを。

 村を指揮ッている妖魔、つまり俺とリンホーとそれから村長がいなくなった隙を狙ってどさくさに占領しようとしたらしい。

 エリナがいなければ危なかったと思う。村人はおろおろしてしまったのだから。

 そんな話は聞いてない、確かめるから一度帰れ。彼女はそう言い放ったそうだ。

 いやはや、よくがんばってくれた。

 すると連中、実力行使だとばかりにバリケードを突破しようとしたので、突破したらしかるべき対応をするぞ、と彼女は叫んだらしい。拡声器のような魔法を用いたそうで、たぶん入り江の監視所にも聞こえたことだろう。

 連中は声の大きさにひるんだが、止まることはなかった。そこで彼女は待機していたシュベイヒに指示をだしたのだ。

 バリケードを押しのけたところでオートマトンを指揮するシュベイヒが登場。後は知っての通りの結果となったということだ。

 もちろん全員死亡だ。

「あんまりうまい状況ではありませんな」

 リンホーが眉を曇らせた。彼の心配は、こうも一方的な結果になると証言はこちら側だけのものになって難癖をつけられる可能性が高くなるということらしい。

「いや、おそらくつけられます。彼らの動機はわかりますか」

 ああ、くそ。面倒くさいことになった。

 動機は情報空間に格納された彼らのデータを調べるしかないだろう。

 塩の件がばれた、というのが一番この時点でありそうな可能性だった。

 ところが、彼らのリーダーの情報を探ってみると動機はまるで違ったのだ。

 この人物は最近わたってきた商人で此岸の旧魔国の近くの商家の出らしい。財産分与を受けて自分で商売をしていたのだが、対岸の侯爵領で魔王、つまり魔物の王の討伐の話を聞くや、本家のおこぼれにあずかるうだつのあがらない分家であることにうんざりしていたこともあって、心機一転わたってきたらしい。倉庫を数件借りたほかは乗ってきた大型商船とその積み荷、そしてクルーが財産だ。当面はそれを運用して此岸、対岸の人とものの輸送に携わっていたようだが、そろそろ腰を落ち着ける場所が欲しいと思っていた。彼自身は貿易商であり、できれば対岸でははばかることなくその腕を振るいたいと思っていた。

 そんな彼のところに別々の方向から二つの情報が集まってきた。

 一つは西に妖魔と取引のある樫鬼と小鬼の漁村があること。

 もう一つは旧魔国の近くから最近流れてきた細工師が出入りの商人に妖魔の取り扱う品物が入手できないか打診してきたこと。

 西の漁村は妖魔との悶着はまだ起こしたくないので監視のみというのが侯爵家の方針だが、手出し無用とは言われてない。ただし、そんな寒村、妖魔と悶着起こしてまで奪う意義を誰も見出していないだけで放置されていた。そんなことより、もっと近くに開拓すべき場所がある。魔物の王の台地は侯爵領の新たな中心として整備される計画で、それに乗ったり開かれた南への開拓に乗り出したり、冒険を求めるなら東の鬼人連合との戦闘に身を投じたりと他にもっと関心を引くことがあった。

 細工師出入りの行商人が彼のところに実家経由で販路を得られないかとあたりにこなければ、彼も関心は持たなかっただろう。

 懐炉やライターなどいろいろ便利な小物を作る細工師で、行商人は妖魔の作る魔法で加工した金属や薬剤などが手にはいらないかと相談をもちかけられていた。

「旧魔国のあたりでは妖魔と人間の商人の取引もあったが、こっちではどうなのか」

 行商人はそっちの出身ではない。此岸でも金属の産地である地方の人間で、人間の扱うものならわかるが妖魔となると門外漢だ。そこで、相談したのがリーダーだった。

 まあ、さすがにこれがホルンの仕掛けとわからないはずはない。

 この場合、リーダーの立場の人間の行動は二種類。

 俺たちと秘密裡に取引するか、人間らしい傲慢さをかさにきてここを占領にくるかだ。

 こうなると、オートマトンを置いていった彼らもグルだったとしかいいようがないだろう。

 で、いまのこの状況はやつに丸投げされているというわけだ。

 リンホーは彼の狂人といったが、四天王の中では一番厳しいのが彼かもしれない。

 なんにしろ、手をうたなければ。

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