飛龍と面談
「意外と小さいですね」
同行者その1、リンホーの感想だった。
同行者その2、リンホーの護衛ゴーレムは当たり前だが無言だ。
同行者その3、テラオ村長は少しおびえて羽ばたきの風から身を守っている。
同行者その4,再生ゴーレム、実験十七号君は手をかざす仕草をし、発声能力で「やあ、これは眼福」などとのたまっている。
再生ゴーレムの実験は今は別の水晶で二十四号まで実施しているが、闇鬼謹製の汎用性の高いものにはなかなかならないし、十七号君のように心のバランスはうまく取れたものはできていない。
十七号の心のバランスを支えているものは何か。それは元にした幽霊の備えた教養のおかげのようだ。何か心にダメージを受けると、彼は教養を紐解き、自分なりに対処を見つけて適用してしまう。問題点は一つだけ。心の安定のために独り言を言わないといけないため、発声装置ははずせないこと。よってうるさいことだ。彼の次の十八号は最初発声装置をつけて再現を確認し、クリアして十九号で発声装置をはずしてみたところ、ソフト自壊、つまり心が壊れて機能しなくなってしまった。
ならばもう十七号クローンでいいじゃないかと言いたいが、二つの理由でそれはやめている。一つは元となった複写元の幽霊に対する敬意と同情。これだけの教養を備えた幽霊は一人しかいない。イワツバメ準公爵だ。
もう一つは発声装置は数が限られていることだ。破損水晶の数より少ない。腕や足などはたくさんあるので、再生した水晶の数だけゴーレムは増やせることになるのにそれができないことになる。
「や、誰かのってますぞ」
独り言が多くてうるさいだけならともかく、十七号君は軽口も叩く。人間くさいのも少し困る。ゴーレムの仕事は危険の肩代わりもあるのにやらせにくくなった。こいつ逆らったりはしないだろうが、愚痴くらいいっぱいこぼしそうだ。黙らせれば発狂する。面倒この上ない。
木立の上ぎりぎりを飛んできた飛龍は、小さいといわれたが胴体だけなら馬ほどもあるし、広げた翼は片翼だけでも胴より長い。貧弱なのは後足だけだが、それだって相対的に蹴爪が小さく見えるだけで腿にあたるところは筋肉がしっかりもりあがっていた。
そして胴に鞍のようなものを縛り付け、二人の人物がのっていた。
スーハオと、初めて見るたくましい樫鬼である。
「お待たせいたした。お揃いのようですな」
上機嫌のスーハオがひらっと降りる。見知らぬ樫鬼はあんまりおもしろくなさそうにそれを横目に見ながらゆっくり降りた。
俺、リンホー、テラオ村長は横並びで彼らに相対した。ゴーレム二体は少し後ろに控えて万一に備え散る構え。飛龍と、機嫌のよくない樫鬼が並び、間にスーハオがたった。
「殿、こちらが飛龍の民を統べる飛龍、明けの花十四世殿だ」
そして一緒の樫鬼が竜の部族の執事でゴウラガというらしい。執事というのはお世話係というのではなく諸事、主の代行をする役職でもあるから彼が実質、南の樫鬼たちのリーダーなのだろう。
スーハオは続いて俺たちを彼らに紹介した。
「お初にお目にかかる。吾輩が竜の民を束ねるものだ」
一見、少しごつい翼竜にしか見えない飛龍がまさかの言葉を話した。少しなまりはあるが樫鬼の言葉だった。
「ようこそ。お話をうかがおう」
正直、彼らにどんな事情があり、スーハオが何をやったのかさっぱりなのだ。




