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飛龍の事情

 飛龍の情報にアクセスしてびっくりした。

 それとともに、なぜあれが南の樫鬼たちを支配していたかも納得できた。

 飛龍の名前は「夜明けの霧の声」という。なんとも優雅な名前だが、驚いたことに生来の種族は鱗鬼だった。とある魔王に最初は傭兵として仕え、意気投合したのかこの優雅な名前をもらってその護衛として近侍するようになった。

 いつごろの話かわからないが、遺跡の魔王も記憶に出てくるのでほぼ同じ時代だろう。

 この魔王が驚いたことに樫鬼出身だった。

 飛龍の民はその魔王の部族の子孫なのだろう。

 樫鬼の魔王は本人が強くなることを望まなかった。戦闘むきの配下を強化することを好んだようだ。

 鱗鬼の「夜明けの霧の声」が飛龍の姿を得たのは、敵対する飛精という種族の魔王と戦うためだった。飛精はスズメバチににた生き物で、体は仔犬くらいで数は多く、言語を持ち、そして魔法も使ってくる厄介な相手だった。なにより、空から弱いところを狙って襲ってくるのはとても厄介だ。

 「夜明けの霧の声」は誇らしい気持ちで彼らを何度も蹴散らした。だが、相手は数が多く決着はつかない。

 飛精の魔王は狡猾だった。

 功名心のある人間の英雄たちを策略で呼び込み、樫鬼の魔王を急襲させたのだ。お互い、倒した相手を取り込んで使っていたが、飛精の魔王は樫鬼の魔王のように「夜明けの霧の声」の補助部隊として戦闘に投入せず、人間の国に上陸して荒らしまわらせたのだ。人間どもに判別がつくわけがない。樫鬼の魔王は討伐すべき「対岸」の脅威とみなされ、倒されてしまった。樫鬼の魔王は心優しい人物だったから、同族の行く末を気にやみ、生き残った配下たちに託した。

 それ以来、「夜明けの霧の声」は残った魔王の民を守って山に君臨している。

 奇妙なことに、それから討伐されるまでの「夜明けの霧の声」の記憶、意識の軌跡はない。膨大な年月を生きてきたのだから、密度が低くても何かありそうなものだ。

 しかも、姿が元の鱗鬼にもどっている。変身しても戻れるのだろうか。

「そんなわけはない。『夜明けの霧の声』はもっと異なるものになったが、元の姿には戻っていない」

 スーハオにはあっさり否定された。

 そして俺は西の湿原に呼び出しを受けた。見せたいものがあるが、それを侯爵領の見張りに見られたくないという。 

「飛龍です」

 どういうことだ。

「やつと交渉しました。殿の配下となること、了承させましたぞ」

 どうやって、というのは教えてくれなかった。うまくいったら種明かしをしてくれるという。

「一度殿に面談し、受け入れていただく必要があります」

 そういうことなら仕方あるまい。リンホー、エリナの二人に相談したうえで、数名の護衛を連れて俺は西の湿地に向かうことにした。

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