飛龍討伐
こういう危険な真似は二度としないでくれ、戻った俺はさんざんに説教された。
「ホルンは有能ですが危険な男です。口車には乗りませんように」
確かに今回うまくいったからといって全幅の信頼はよせないほうがいいだろう。
それはともかく、侯爵領との付き合い方をどうしたものか。
リンホーたちも人間の勢力とは接触がなかったそうで、そのへんはなんともはっきりしない。
「ただ、跳ねっかえりが襲ってくるかもしれませんから、防備はきちんとしておきませんと」
侯爵領がいけいけムードだというと彼は警告した。侯爵の軍はこないが、民兵レベルの勝手な襲撃は警戒しておくべきだろうと。
「その際の対応は二つ。圧倒的に勝てるなら全員とらえるか、ほとんど殺して心の折れた数人だけをとらえるかですな」
「とらえたものたちはどうするのだ」
「あちらの責任者を呼びつけて引き渡します。襲撃されたから反撃しただけ、これを確認し一筆とることをお忘れなきよう。都合よく握りつぶされぬよう、あちらの全員にも伝わるようにすべきでしょうな」
どうあれきつい対応になりそうだ。
使える戦力は樫鬼、小鬼だけだとどうも不安だ。そもそも少ないのだからできるだけ村人に被害を出したくない。対策を練らなければ。俺一人の知恵では足りない、リンホー、エリナ、テラオ村長はじめ樫鬼たち、ゴドルはじめ小鬼たち、妖魔の商人にも知恵を借りる必要があるかもしれない。ホルンにもメッセージレベルで相談、そして実戦的な話はやはりスーハオだ。
そのスーハオからぎょっとするような連絡がきた。
「いけそうなので、南の飛龍を討伐する」
いきなりすぎないか。
スーハオ自身は俺のレベルのせいで制限を受けている。最盛期の実力でことを判断したのだと危ういことこの上ない。今の俺が十レベルだが、最盛期の彼はおそらく五十は越えたレベルに相当したはずだ。
そのことをメモで指摘すると、すぐ返答が返ってきた。
戦うのは彼自身ではなく、彼の配下たち。俺の直下でないためレベルの制限は受けないらしい。まず、それは確認済で、その上で飛龍を倒す算段を立て成功を確信した、という。
「やっつける理由は三つくらいある。そろそろあれくらいでないと殿は強くなれない。強くなってくれないとこまる。あれを倒してあそこの樫鬼たちを入手すれば、東の鬼人連合との連絡がしやすくなる。数も多いからやっぱり殿の力になるだろう。それから、殿の最初の民たちの逃げ込み先が必要だろう」
鬼人連合というのは初耳だが、東の樫鬼と鱗鬼の連合軍のことを飛龍の民がそう呼んでいるそうだ。
そしてダラたちの逃げ込み先というのは確かに欲しい。飛龍の民が素直に従ってくれるかどうかわからないが、ダラにあずけた蜘蛛たちと組み合わせれば手ごわく侯爵領の南下に抵抗してくれるだろう。
「あとは、まあ、取り込んでから情報空間で飛龍のやつを読んでくれ」
何かつかんでいるようだが、スーハオは教えてくれなかった。ただ、最後に彼はこういった。
「そろそろ、殿は力を内在させるか、外在させるか決めないといけない。わしは内在、ホルンは外在だ。この違い、よくよく考えておいてくれ」




