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潜入(2)

 侯爵領の街並みは遠目に見ただけだったが、拡大しているのがわかった。特に南の森林地帯に斧がはいって広めに切り開かれている。熊や狼が出るので櫓をいくつか組んで警戒しているのが見えた。鹿を見かけた警備の連中が弓や投げ槍をもって夢中になっておっかけるのも見えた。

 掘り起こされてない切り株を避けながら、ロクザン翁の執事、モロシゲの先導に従って重い荷物を運んで行った。もう人里なので、ゴーレムは解体して荷物にいれてある。顔が見えないように葦を編んだつば広帽をかぶったホルンと俺がそれに続いた。

 執事のモロシゲとはロクザン翁と取り決めた通り、墓地の近くの三つ辻で合流したが、執事という言葉から想像したのとはまるで違っていたもので、最初は人違いかと思いそうになったくらいだ。

 モロシゲもロクザン翁には長く仕えているらしく結構年配だ。黒白メッシュになった髪を総髪にまとめ、たくわえた口ひげとあごひげを整え、直垂のような衣装の上にキルトの肩衣をひっかけ、腰には帯と別に剣帯を巻いて短めだが幅広の剣を吊っている。烏帽子のようなものはないので、武士と間違う心配はないが、侯爵領軍の兵士の革鎧とはだいぶちがうたたずまいの戦士に見えた。

 交わす言葉も最低限だったが、目は鋭くおよそ俺の抱いていた執事の温和なイメージとはかけ離れた人物だった。あの主人に仕えているのなら、愚痴も多そうだが、どんなに水を向けてもそれを漏らすことはない。

 ロクザン翁の屋敷は元は侯爵領の市街地から少し離れた小高い場所に木々に囲まれてあったそうだが、今はその周辺にも開拓の手がはいって畑になり、農夫たちが野菜を作っている。穀物などはもう少し低く平坦なところに広い矩形を連ねて作付けされているが、このあたりのように起伏もまだ残っていて広く使えない場所ではいろいろ区切っていろいろ栽培されている。小松菜なのかチンゲン菜なのかわからない葉もの野菜、サトイモのような葉のおそらく芋類、まだまだひょろひょろしている果樹とおぼしき木。ロクザン翁の屋敷は敷地を主張するところに白くぬった杭と横木を張り渡して勝手に畑にされないようにしていた。屋敷と、庭と、垣根がわりの広葉樹の二~三列くらい。この樹もどんぐりのようなものがなっていて、これはこれで食べられるらしい。樫鬼たちのように粉に引いて水にさらしてあく抜きするのだろうか。彼らはそれを練って平たい石の上でやいてひきわりパンにするのだが、まあ、あんまりうまいものではない。

 畑で終わった実もの野菜の残りをひっこぬいて堆肥に積み上げている農夫に一度声をかけられた。見慣れぬ人間二人を連れているので不審に思ったのだろう。

「モロシゲ様、そちらは? 」

「旦那様の呼んだ職人だ。またなにかお始めになるらしい」

「ああ、船がつきましたからねぇ」

 農夫の様子に排他的な感じはなかった。が、警戒心はあった。

「あんたら、どこの出身だね? 」

 こういう質問に対する答えもロクザン翁と打ち合わせ済だ。

「旧魔国の近くですねん。それ以上は勘弁しとくれやす」

 そういえば、察して追及されることはないそうだが、なぜかはあんまりわからない。何かひどいことがあったらしい。

 農夫はそれ以上追及してこなかった。深い同情を浮かべただけだ。

 促され、俺たちは林の小径だったところを踏んでロクザン翁の屋敷についた。

 


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