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潜入(1)

「どうでっしゃろ。殿もおいでになりまへんか」

 ロクザン翁を呼んでホルンを引き合わせ、日取りを決めた後に彼はそんなことを言い出した。

 何を言い出すんだこいつ。

 英雄部隊が引き上げる船に入れ違いで追加の移民者たちが乗ってくる。そのどさくさに紛れてホルンを送り込む算段になっていたわけだが、それはつまり俺たちが侯爵領に入るときにはまだ英雄部隊がいるということだ。うっかり出っくわしたらどうなるものか。

 あの時はレベルが今より低かったから勘違いですんだようだが、今はどうなったものかわかったものじゃあない。

「長期滞在せいということではおまへんで。一日くらい様子みたらすぐに戻ってもらえばよろし」

 何が言いたいのかなんとなくわかった。

「一度直に見とけというのか」

「はいな。侯爵領とどないなつきあいすることになるかわかりまへんが、見ぃもせんとは決められまへんやろ」

 そのために、危険を冒すのか。

 俺の人生は引きの悪いことだらけだった。今回もろくなことになりそうにない、

「なるほど、殿は行かないことを選択したいというわけでんな」

 突然、ホルンが妙なことを言い出した。

「リンホーもエリナも同じ意見だったろう。俺も同じだ」

「そして殿は自分がいつも最悪の選択をすると思ってる節がある」

 それ、誰に聞いた。

「ロクザンさんもリンホーもテラオ村長もみんな知ってまっせ」

 彼はだからこそ、と確信をもってこういった。

「行くべきやと思います。おそらく大事なものを得ることができるんやないかと」

 これはロクザン翁の同意がないとできない誘いだ。あの爺、そのまま俺を手元に抑留する気じゃないだろうな。

「行きはいいとして帰りの段取りがないぞ」

「ロクザンさんの霊体の弟子が案内してくれることで決まってまんな」

 興味がひかれないわけはない。

「さ、行きましょ。あの二人には置手紙おいていけばよろし」

 こいつが嫌われてる理由がわかった気がする。そして、ロクザン翁と妙に馬があっていたのも。

 狂人とまで言われるわけだ。

 しかし、彼が俺をさそった本当の理由は他にもあった。

 さんざん悩んで絞ったはずだが、それも荷物が多すぎて運び込むのに人手が必要だったのだ。本人と、本人の召喚した魂なしの配下の二人では足りない。この配下は職人で、あちらではホルンの助手を務めることになる。ホルンは金物職人をやるつもりらしい。

 途中まではゴーレムを使うから俺は軽いものだけ持てばいいが、人里に出たらゴーレムはしまうしかない。その分を俺が運ぶのだ。

 ステータスが上がっているので、実は苦でもない。ホルンが遠慮しなかったのは本当はそんなところなのだろう。

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