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潜入準備

 このどこかいかれた人物を送り込むことに、今さらためらいを覚える。だが、まずは本人に話をしてみないとだめだ。

 というわけで、召喚者でも侯爵領の人間でない人間で、機転も聞く人間をロクザン翁にもとに送り込みたいと正直に持ち掛けてみた。それと、もう一つ考えている目的も。

「侯爵領で入手できるもので必要そうなものを密輸してほしい」

「殿さんは悪い人ですなぁ」

 悪人呼ばわりされてしまった。

「気に沿わないならしないでもいいぞ」

「そんなことはありまへんな。準備に二、三日いただいてよろしいか」

 意外なことにホルンは承諾した。準備の二、三日というのはたぶん過去の資産の確認だろう。

 と思ったら、遺跡の倉庫はもちろんごそごそやっていたのだが、同時に遺跡の警備をやっているシュベイヒを捕まえて何か質問しているし、妖魔の商人がやってきたときくと、予備の妖魔ファッション借りて話を聞きに行ったり、ついでに海岸の温泉付近で何か見慣れない道具でごそごそやってたり、そういうのをいつ寝てるのかわからない忙しさで精力的にやっている。何やってるか聞いても、答える暇も惜しそうに「まあまあ、そのうち説明いたしますよって」とごまかされた。

 この間に俺のやってたことは二つ。ゴーレムへのダウンロード実験と魔物の王の魂の修復だ。

 修復は不十分でまだ召喚できる手ごたえがない。気長にやる必要があるようだ。ダラのところに兄を返してやれる日はまだまだ先のようだ。

 ゴーレムのダウンロード実験は思わぬ人物の助言で見通しがつくことになった。

 ホルンだ。彼はゴーレムを一つ連れて行くことにしたらしい。水晶の保管倉庫にエリナとともにやってきて、頭と胴だけのゴーレムと少々頓珍漢なやりとりをしている俺を見て食いついてきた。

「な、なにしてはるんですかっ」

 ゴーレム用の発声装置が一つだけあるのだが、俺はそいつを腕と足のかわりにつけて、命令と行動申告を受けて正常かどうかを判断していたのだが、それが彼にはこう見えたらしい。

「漫才でもやってはるんですか」

 遠慮がねえなこいつ。

 簡単にプログラム技術をこう応用して、と説明してやるとうーんとうなってからロジック的な指摘をしてきた。

「たぶん、エクスセプションが切れてないとこがあるんでわ。原始的なデバッグやけど、わからんところでは発生した処理とその時のパラメータを喋らせるとよろしいかと」

 ああ、うんそうか。デバッグか。そうだという頭がなぜかなかった。元が複写とはいえ霊魂だ。たぶんそのせいで機械のように扱いきれてなかったのだろう。

 そうと割り切れば確かめて直したいところは書き出せるし、対策もできる。

 準備ができた、とホルンが俺に報告に来た時には、俺は成果をロクザン翁に披露できるまでになっていた。

 いよいよ、侯爵領に潜入だ。

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