最後の四天王
とうとう気絶することなく、元魔王を召喚することに成功した。
魔物の王を取り込んだことと、レベルを10までのばしたことは十分効果を発揮した。
ただし、気絶しなかっただけで、とんでもない倦怠感に膝をついてしばらくぜいぜいあえぐ羽目にはなったが。
ぽっちゃりした商人のような顔の男がそこにいた。出身国は俺とは違うらしい。肌が浅黒いが彫りは深く、ひとみは青い。中東かインドの人間のように見える。スパイスの匂いがしてきそうだ。彼の真新しい魂は、まだ少しとまどっているようだった。
「着とけ」
リンホーに投げつけられた布を彼は慣れた感じで器用にまいた。そしてエリナに介護される俺の前に正座した。
「あんさんが新しい殿ということでよろしいのかな」
なんで関西弁。いや、彼は見かけだけで関西の育ちかもしれない。あるいは、魂の修復時に何かあったのかもしれない。
言葉で応じる元気がなかったのでうなずくと、彼は深々とそのまま土下座した。
「ほな、こんごともよろしうお引き回しのほどを」
スーハオのように俺を品定めしないのだろうか。
そんな疑念が読み取れてしまったのか、彼はへらっと笑った。
「まあ、お話を聞かせていただかんことには始まりませんから。ここにこの二人がおるなら、なんぞ期待してることもございますやろし」
そらそうか。彼からすればまだ右も左もわからない状況なのだ。
ゲームシステムをはじめとした俺のこと、配下の受ける恩恵と制限、現在の配下の状況そして拠点、それから周辺情勢。侯爵領、東の樫鬼と鱗鬼連合、西の妖魔の交易都市と南西の鉄鬼の都市、南の飛龍の民などについて、話すことは多かった。最初にリンホーとエリナがだいたいのことを説明してくれたので、なんとか回復してきた俺の話すことは多くはなかった。
「詰みかけてるやないですか」
侯爵領のことをきくやホルンはけらけら笑った。怒るリンホーにそんなもの、笑うしかない、と彼は平然としている。
「それで、自分に何をご希望で? 殖産興業は間に合いまへんな。侯爵軍を一発でふっとばすような秘密兵器? そんな都合のいいもんはありまへんで。スーハオに手練れを出してもらうくらいが関の山。一時しのぎになれば御の字でんな。昔のがらくたが使えるかもしれまへんが同じこと。ああ、いっこだけ、あるもんがうまく動けばできそうなことがおます」
ぺらぺらよく回る口だな。
「できそうなこと? 」
「海岸の地熱の出てるとこありますやろ。あそこにひび入れますねん。せやな、倉庫に寝てる掘削機がまだ使えるならそれでかましてやればいけますやろ。そしたら」
「そしたら? 」
「あれで蓋されてたマグマが出てきて噴火になります」
あかんやん。
「村、だめになるだろ」
「でも、村に居座られることはなくなりますわな。火山だったら危ないから近くに住むやつはおらんでしょうし」
つまり、最終手段としてまだ死んでない火口湾にある村を噴火活動で相手にも使えなくしてしまう、ということらしい。
彼のことを「狂人」と言ったわけがわかってしまった。
侯爵領軍と戦うことになったらまず勝てない。そうなると村の人間は以前の通り遺跡に逃げることになるだろう。だが、人がいなくなれば引き上げる魔物の王の人狩り部隊と侯爵領の人間はわけが違う。
製塩、温泉の存在を知れば間違いなくそこに人が住み着き、道路も整備してしまうだろう。奪回はいつかできたとしても元の村の生活は戻ってこない。
理にはかなっているが、その考えがまっさきに来るあたり、彼は天才というか天災のようなものだ。
「それで、実際ボクに何してほしいんです? 」
圧倒されている俺にホルンはにこにこそう聞いてきた。




