邪悪?な術師
低級霊を集めている理由はダイを見せて説明することにした。
どうせ隠しようもないし、ロクザン翁がなにも気づいていないとは思えなかったしね。
ゲームシステムのことは言わず、こうやって知識など集めているし、一部の幽霊はこうやってしばらく召喚できるということを伝えると、老紳士は目を輝かせた。
「ほう、ほうほう。ほう」
興味津々にダイのまわりをふわふわ飛び回っている。
「実に、実に興味深い。おぬしはこの術をどうやって覚えたのだね」
どうやって、もこうやって、もない。
「それはちょっと言えない。すまない」
こう答えるしかない。この好奇心旺盛な不死者は納得しないだろうと思ったのだが。反応は意外なものだった。
「そうか。それなら仕方ないのう。取り込めるのは低級霊だけか? 」
もう少し上達すれば、もう少しだけ強い霊も取り込めそう。それは正直に答えた。今後もロクザン翁のようなのと接触するかもしれないので、感触はつかんでおきたいのだ。
「そうか。それなら、そのころにまたくるといい」
「いいのか」
「おぬしが拾ったのはわしの研究対象外だ。今回拾わなかった分もまだまだ。なら邪魔にはならん。後で少し協力してくれるなら、少し術を教えてやってもよいくらいぞ」
気前のいい話だが、信じていい話なのだろうか。
「協力とは? 」
「具体的にはまだ決めておらんが、おぬしの召喚とあわせておもしろいことができるかも知れん。少し調べてから説明をするよ」
即答しかねる。邪悪な術師なのは確かなのだからろくでもないことをするのかもしれない。
ためらっているとロウザン翁は気にするなという仕草をした。
「んま、そのへんはそのときにな。わしとしては話し相手になってくれるならちょいとうれしい」
話し相手、か。ロウザン翁の身の上とか気になるところだが、それを聞くなら俺も話さないといけなくなる。
「わかった。今日はこのへんで失礼して、少し考えてみるよ」
「楽しみにしておるぞ」
老紳士はあっさり俺を解放してくれた。
今一つ意図の読めない御仁だったが、一つ確実なことがある。
間違いなく今の俺より強い。見逃してくれたのも、話し相手云々は少しは本当だろうけど、何より俺が興味を引きこそすれ、脅威になりえないからだ。
ゲームでいえばたった2レベル。一般人なみの俺が、あんな強い存在感の不死者に勝てるわけがないだろう。彼のやってる実験にも興味はあるのだが。
とにかく目的は達成だ。帰り道は急いだ。夜明けころになれば動き出す人もいるだろう。漁師なんかは夜明け前に動く。姿を見られたくはなかった。
樫鬼の村に戻るころには、夜が白み始めていた。
いつもなら蛇たちを呼んで採取に放つのだが、そうはしなかった。
俺は自分も強くしないといけない。2レベルにふさわしい生き物を狩らなければいけない。せっかくダイがいるのだ。彼に狩人として働いてもらおう。
召喚時間の延長のため、手ごろななにかを急いでとって食べること、そしてその後は中型小さめの魔物や獣をとってくることを指示して彼を放った。
驚いておきてきたダラが食事の用意を始めた。
俺は今回つれかえった人間の幽霊たちの情報の精査に時間をあてた。