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報告

「まずは敵対魔王の討伐をお祝い申す」

 見たことのない仕草だが、敬意を表するものだとわかる姿勢でスーハオは祝辞を述べた。

 まあ、敵対してた覚えはないのだけど、魔物の王の最後の様子を考えればそれでもいいか。

 漁夫の利で得た勝利だから、俺としては複雑な気持ちもある。

「運も実力のうち。あまり気に病みなさるな」

 いや、運の悪さには自信があるんだけどな。それより、聞くべきことがあるだろう。

「まずは情報の共有を。大将軍、まずは遠征の報告をしてもらえるか」

 承知、と気持ちのいい返事をしたスーハオは遠征先で見たものについて報告してくれた。

 まずは入り江の蜘蛛退治、これはエリナの糸溶剤があったので切り裂いて倒すだけで簡単だったという。

 その時点で、あそこの人狩部隊の拠点には何もいなくなったのは間違いないそうだ。

「蜘蛛の巣が海の中にも張れるとは思いませんでしたな。六匹中三匹は海に特化してまるでカニのようでござった。ああゆう変化はどうやって出すのでしょうな。残りの三匹は陸の木立とその中の古い釣り小屋を糸で覆って増築しておりました」

 カニのような、か。情報空間でちらっと見ると、どこか毛ガニに似ている。大きさがまるで違うし、一対しかない目は黒目があって人間の目玉のようで不気味だった。

 彼らが掃討されたあとに台地から落ち延びてきた魔物の王は、あそこに拠点があることを追い詰められてやっと思い出したのだろうか。

「西のほうは村の樫鬼が広く管理しているので、南にむかいました。飛龍とそれをあがめる一族の縄張りの西を抜け、鉄鬼の鉱山都市の東を南下し、別の森番一族などがおらんものかと」

 ところが、土台しかのこらない建物の痕跡をいくつか見つけたほかはまるで管理されていない森が広がり、やがてとぎれて荒れ地の砂漠の手前までついたという。

「そこで西から流れてくる魔獣に遭遇し、これを狩りながら鉄鬼、飛龍の樫鬼たちに接触をば」

 あの四種類、角のある大蛇、恐竜面のカバ、角のあるクロヒョウ、そして不浄の鼠。

 蛇の角はやはり魔法の触媒で、鉄鬼たちに高く売れたという。妖魔との取引で高く売りつけることができるらしい。巻き付いた相手に電撃を流す魔法、それと自らを射出し、飛ぶ敵をからめとる魔法があったそうだ。クロヒョウの魔法はもっと独特で、屈折率を操作して実際の位置をずらして見せる魔法らしい。

 そういう幻獣は何かのゲームにいたな。

 ただ、背景ごとずれてしまうので注意していれば見抜くことはできるそうだ。

「狡猾な個体は自分ではなく、大木など障害物を自分の前にずらして身を隠すのに使っておりました」

 このクロヒョウの角もまあまあの値段で鉄鬼に売れたそうだ。飛龍の樫鬼たちは魔法的なものには興味がないが、クロヒョウの漆黒のなめらかな毛皮は喜んで物々交換に応じてくれたという。

 閉鎖的で傲慢ときく飛龍の民がよく取引に応じたものだ。それにスーハオの外見で警戒されなかったのも不思議だ。

 そういうと、彼は愉快そうに笑った。

「警戒されてたぞ。邪霊か、と樫鬼に聞かれ、魔王か、と鉄鬼に聞かれもうした。そこは正直にかつてはそうだった、と答えたらあまり邪険にはしないことにされたようで」

 いや、それつまり彼の上がいるって宣言したようなものじゃないか。

「俺のことは? 」

「もちろん言ってませんぞ。殿が襲われでもしたらたまりません」

 すぐ死にそうだものな。

「それで、魔獣たちはどこからくるのかな」

「鉄鬼たちの話では、彼らの都市からみて南西にかなり崩壊した遺跡があるそうで、その神殿らしい建物の奥から出てくるようですな。中を確かめに入って戻ったものはおらんと」

「もしかして、乗り込もうと思ってた? 」

 いかにも、と大将軍は胸をはった。

「といっても手に負えそうなら、ですな。様子見にいこうとしたところで殿が魔物の王を討ったのでわしだけ引き返すことにしたのです」

 残りのしもべはあのへんで狩りを続けている、そうだ。道理で鼠の数が増え続けている。

「手順はわかりもうしたから、魂なしでも大丈夫です」

 どんなやつらがいるか聞くと、人型が人間、闇鬼含めて六人、獣型が大小二匹、鳥型が一匹らしい。それ以上の説明は省かれた。自然の生き物ではなく戦闘用に生み出されたり改造されたものばかりなのでそのうち見てもらう機会があるからその時を楽しみにしてくれと言われた。

 鉄鬼と取引したというが、人型がいるなら武器などもそろえたのだろうな。

 報告は以上だった。だが、ここからが本番だ。今後のことを相談しなければならない。

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