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台地の再戦(3)

 それにしても英雄部隊は強すぎる。

 装備がよいのも大きい。半端な攻撃で傷もつかない甲冑の威力は確かに大きい。だが、しょぼいこん棒でも渾身の一撃ならばやはり運が悪ければ骨折くらいするだろう。だが、彼らの対さばきは見事で、流すように受けて流れるように反撃の一撃を入れる。無傷ですまないとしても、せいぜい軽い打ち身程度ですんでいるだろう。侯爵領軍は骨折者が何人か出てるし、怪鳥の爪でひどい裂傷を受けたものも少し、運の悪いものが一人、頭を割られて即死していた。見えていなかったが、仲間の手でとどめをさして魔物の王の眷属化から逃れさせた者も一名ほどいたようだ。

 それでも、侯爵領軍の被害は軽微といえた。他にごろごろ転がってる数十の遺骸は魔物の王の配下の召喚人間や樫鬼、小鬼、蛙人に怪鳥だったのだから。

 混戦、乱戦であったことを考えても一方的にすぎた。

 台地の蜘蛛の巣要塞にとりついた彼らは、なにか太い筒状のものを何本も後方から運んできたが、それはいわば火炎放射器だった。俺の手袋よりたぶん火力が強い。あの筒にたっぷり触媒がはいっているのだろう。

 それで炎を蜘蛛の巣の中の通路に送り込んだのだ。

 魔物王の側からすればのこのこはいってくれば地の利のある彼らが不意打ちをかけ放題という計算だったのだろう。時間をかけて切り開きにかかるなら強襲したり、後方を襲撃したり何か手をうてそうだ。

 中で迎撃しようとしていた魔物の王の配下の者たちはそのまま焼かれた。難燃性で通路ができていたので通路沿いに炎が走って糸ほど燃えにくいわけではない肉体を燃やしたのだ。

 邪魔するものがいなくなった後、彼らは刷毛に浸した薬剤で蜘蛛の巣を切り開いていった。塗って少しおくと柔らかくなるらしく、そこを地道に鉈や手斧で切り開いていく。切り出した蜘蛛の巣ブロックは何かに使うのか、大事そうに運んで行った。作業をするのは侯爵領軍の兵士で、英雄部隊はその近くで襲撃に備えていた。

 このペースなら、明日には台地の中心まで到達しそうだ。

 俺は視界を切って少し休むことにした。

「どう思う? 」

 書庫で一緒に同じ視界をじっと見ていたエリナに意見を聞いてみると、彼女は鼻でふっと笑った。

「まあ、がんばったほうね」

 なんだその優越感は。

「ちゃんと切れてたけど」

「そうね。彼らは間違っていませんわ。糸の剪断力への抵抗となる構造だけを分解する薬剤を作ったみたいね。叩ききるならそれで十分。蜘蛛が糸を切るときに使うのは二液式だけど、そこまで思いつけというのは酷ですわね」

 上から目線だなぁ。

「それで、彼らは魔物の王まで到達できそうかな」

「戦争のことはあまりわかりませんが、あの薬剤が十分かどうか次第ですわね」

「足りなくなると? 」

「もし、わたくしが魔物の王なら、彼らの掘り進んでいるところは通路もなにもかも糸でふさいでとにかく邪魔に徹しますわ。出口はほかにもあるのです。人間側が不利なのは、人数を削られればそれっきり。魔物の王は手ごまが増える。そこをじっくり攻められたらいずれひっくり返せる。そうしますわね。英雄部隊ですか。あの人たち怖すぎます。でも侯爵領が半壊したらどうなるでしょうね」

 こいつも恐ろしいこと考えるな。

「閣下、提案があるのですが」

 リンホーまで登場した。

「エリナの言う通りであると思いますし、便乗してわれらも侯爵領の力をそぎませんか」

「リンホーは魔物の王より彼らのほうが危険と判断するのか」

 実際、危険だとは思う。

「それもありますが、閣下のお力を底上げする絶好の機会かと」


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