台地の戦い(2)
英雄の率いる部隊は一目でわかった。
侯爵領の兵士は見た目茶色いが、彼らは青い。これは鎧の違いだ。
生成りの革鎧に、急所をまもるために胸当や腹当を追加した侯爵領の兵士たちと、鎖帷子や鱗鎧などで全身金属で守った英雄部隊の違いは、豊かさの違いを見せつけられているんじゃないだろうか。侯爵領の兵士の胸当などは無骨な鉄板ならまだましなほうで、たいていの兵士のものは木だ。どこに生えているのか、竹っぽいので固めてる者もいた。
その英雄部隊を先頭に、侯爵領の軍は台地にせめのぼろうとする。
そうさせまいとする魔物の王の獣や人間、樫鬼などの召喚兵士が衝突する。
偵察小鳥で俺はその様を眺めていた。
戦闘には大きな羽根飾りのついた兜の指揮官が立っている。遠目でわかりにくいが、女性にしては背は高いほうだが、魔法重戦士というごつそうな印象とは違ってすらっとしている。鱗鎧をきているのに足が速く、大きな盾と槍にしては短く、やたら太い謎の武器を構えていた。
続くのは同じく大きな盾をかまえて凶悪なスパイクのついたこん棒や長剣を構えた十人、さらにもう少し軽装の十人がつづき、さらに侯爵領の兵士五十人が続いている。たぶん、これは侯爵領の全軍でないにしろかなりの割合の兵数だと思う。英雄部隊の残りの十人はその後ろで弓を構えていた。
魔物の王の先遣隊は百近くいて、こちらもほぼ全力を出しているとわかる。人間の目をそなえたあの蜘蛛はいない。全部魂なしなのだろう。
戦いは英雄部隊の弓隊が矢をぱらぱら降らせることから始まった。十人ぽっちの矢では大した効果もないと思ったんだが、それは間違いだった。
降り注いだ矢が爆発したのだ。魔法具だったのだろう。侯爵領の兵士たちがびっくりして足がちょっとの間止まる。この魔法具のいわば砲撃を継続すれば白兵戦など不要かと思ったが、さすがにそれで種切れだったらしく、弓隊は左右にわかれるように走って射線が通り次第、通常の矢を射こみ始めた。腕はめちゃくちゃいい。
そして先頭を走る隊長が手にした謎の武器を盾にひっかけて構える。構えからして銃のようだと思ったが、間違ってはいなかった。
ショットガンだった。
彼女の前方にいる獣や人が朱にそまって、倒れたり、なんとか立っているところに背中から長い剣をずらっとぬいた隊長と、その仲間たちが突っ込んだ。
敵陣を真っ二つに切り裂いた英雄部隊、侯爵軍は左右に背後からまきこむようにして魔物の王の兵を掃討していった。
前哨戦が始まっておわるまで二時間もかかってはいない。
息を整え、隊列を直した彼らが次ににらむのは台地の上の魔物の王の本陣。蜘蛛の巣で白くなった森林に分け入っていかなければならない。




