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エリナ

 今回は気絶まではしなかった。

 四天王二人目の召喚は陰陽方のエリナとした。女性だというのはわかっていたので、巻き付けるシーツを用意しておく。リンホーの提案だ。闇鬼女性の羞恥心は人間に近いらしい。

 そういう意味では、野外ではやめて、材料として遺跡の居住区の壊れた家具などを書庫のある区画の誰もすんでいない住居に運び込んで戸を閉め切って、そこで召喚を行った。

 闇鬼は人間とは異なる種族と一目でわかるが、美醜の感覚は近いらしい。

 エリナは美しく優美な女性だった。樫鬼や小鬼は異種族という感じがぬぐえないが、彼女は異種族とわかっていてもなんとも親しめる雰囲気を持っていた。

 魔力がごっそりと抜け、尻もちをつく俺を彼女は悠然と見下ろし、用意したシーツに気づいてこれをくるっと上手に巻き付けた。インドのサリーのような着方で今までの召喚者で一番優美な姿になる。

「はじめまして。あなたがわたしの魔王様かしら」

 おっと気おされている場合ではない。俺はできるだけ鷹揚に見えるよううなずいた。もちろん虚勢だった。

「タケトというよしなにね」

「エリナですわ。どうぞよろしく、タケト様」

 ちょっとの間とはいえ半裸を見られたというのに落ち着き払っている。小娘ってわけでもないがゆえの余裕なのだろうか。

 彼女は自分の指先を眺め、ほほに手をあて、不意に目を丸くした。

「あら、あらあらあら。これはどうしたことでしょう」

 彼女に説明することがたくさんある。だが、リンホーにたのまれたことがあった。

「そのへんは、リンホーに聞いてくれないか。彼がまず話をしたいそうだ」

「あいつ、いたんですのね」

 エリナはちょっと顔をしかめる。この二人、犬猿の仲だったのだろうか。

 ドアをあけて呼ぶといそいそとリンホーが入ってきた。

 再会した二人の挨拶は一言づつのそっけないものであったが、なぜかどちらも少し驚いているような様子があった。

 まあ、同僚であり同族だ。なんらかの腐れ縁はあるだろう。首はつっこまないほうがよさそうだ。

 俺はリンホーが現状について説明するのを聞いていた。間違ったことは言っていない。「ゲームシステム」についても教えた範囲では正確にものをいっている。そして俺がじっくりレベリングをしていることと、そのレベルに彼らの能力も影響を受けていることを説明すると、エリナは「まあ」と声をあげた。

「では、わたしがタケト様に愛想をつかして出ていけば元の通りになるということかしら」

「おいおい、そんなことを露骨に」

「仮定のお話よ。あなたと同じで、わたしもタケト様に恩義がある身。よほどのことをされないかぎり、そんなことはありませんわ」

 これはどうも釘をさされたようだ。まあ、彼らに愛想つかされたら死ぬだけなので、そんなことはできるだけしないようにするつもりだ。

「それで、スーハオやホルンでなく、わたしをリンホーの次に選んだということは何かお望みのことがあるのだと思いますが」

 もちろんだ。

 単純に戦力を欲するならスーハオ、村の生活水準を向上させるならホルンとリンホーから提案を受けているが、樫鬼も小鬼も魔法を使わず、人間の中に魔法使いがいるということを考えればやってほしいことはいくつも出てくる。人間側に脅威を与えず、しかし隙をなくしておきたい。

 それを俺は説明した。

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