開戦前
始まってしまえば、決着は一日かもしれない。
だが、そのためにも英雄と魔物の王が激突するまでにおそらく数日かかるだろう。
まずは情報を集めるはずだ。
その上で攻め込むまでには何日か、偵察と作戦検討、準備の時間が必要なはずだ。
一回の激突で決着がつけば一日、予想外の苦戦をして一度撤退することがあればさらに数日以上。
あとは魔物の王が倒されるか、英雄が力尽きるまでその繰り返しになるだろう。
魔物の王にはできるだけ粘ってもらいたいし、できれば英雄を撃退してほしい。
双方深く傷ついてにらみ合いが長引けばもっといい。
ま、そうはならないだろうと思うから準備を進めないといけない。
おそらく、魔物の王を討伐すれば借り物の戦力である英雄は帰国してしまうだろう。その後、この村を脅かすとすれば侯爵領の兵士たちだ。英雄が相手だと、おそらくがちがちの城壁とたくさんの兵士がいないと食い止めることもできないと思うが、侯爵領の兵士たちに簡単に落とせない、無理をすると犠牲が大きいと思わせることならできるかもしれない。
とりあえず逆茂木の防柵を村の周りに二重にはる。出入りの場所は必要なので、その側には砂を海藻や樹液から作った接着剤で固めたレンガをつんで陣地を作成し、投石用の石、槍などの武器を置く。押し出して入口をふさぐ簡易の門も作る。これだけでも侯爵領の行動が早ければ完成が間に合わないかもしれない。だが、もっと時間が稼げればもっと設備を充実させていかなければならない。そのために四天王の他の誰かを呼ぶべきかリンホーに相談したが、慌てて呼ぶ段階ではないだろうと言われた。残り三人ともオーバースペックすぎて今の段階ではできることがむしろ少ないだろうというのだ。
「私は腕っぷしや魔力で勝負するほうではないのでお役にたてるかと思いますが、一つ制限がありました。どうやら『ゲームシステム』のせいなのでしょう、本来の力に対して制限を受けています。魔王組の二人もおそらくそうでしょう。まずは殿のレベルを向上させなければなりません」
びっくりするような新事実だ。ならば俺のレベルを考慮しなければならないだろう。レベルがあがれば、少しだが村人たちも強化される。意義はあるだろう。
村の者たちが獣の間引きや漁をせっせとやってくれたおかげで、俺のステータスは普通の人間の倍近くまで向上していた。情報空間に残されたいわば「ログ」を見れば何が向上に寄与し、何がしないかがわかる。向上しない層が出てくるとレベルを一つあげるということをこの二十日あまりの間に何度か行って、俺のレベルは6に達していた。身を守る結界の枚数も十二枚になっているので、たぶん同じ場所なら、普通の人間に武器で二、三回なぐられても大丈夫だろう。やってみたわけではないが、熊の一発もおそらく耐える。耐えるがふっとばされるのはおそらく回避できないと思う。問題は攻撃手段がないことだ。金属製の槍でも力任せに刺せばいけるかもしれない。あとは初歩的な魔法もあるが、触媒がいるし、触らないと発動できないし、気の利いた魔法技術者にいいのを作ってもらわないとどうにもならない。
そういう意味では、闇鬼のもう一人、陰陽方のエリナを呼ぶべきじゃないかと思うのだが、リンホーがなぜかあまりいい顔をしない。何か確執でもあるのだろうか。
レベル6に達したので、召喚、維持できる人数は倍以上にふえている。うち、ダラとリンホーは魂を宿したのでコスト不要だ。魂なしならあと二十人はいける。といっても、森番とちょっとした職人といった普通の村人が大半で、特殊なのといえば魔物の王が偵察につかってた鳥くらい。あとは四天王。それと人間の墓地で拾った前準公爵、大工、農婦、魔物の王の襲撃隊にいた農奴の青年、蛙人など。わりとこれというのがない。廃村の拾った幽霊なら残り十一人なので全員召喚できるが魂も載せるかどうかでいろいろかわる。ダラと相談しないといけない。
レベル6になるときに、ちょっとした選択が出た。
肉体変形、という穏やかでない選択。問題が提起され、解決をしめせというのが選択メニューだ。
6になったときにでてきたのは筋力の増強に体が耐えられないので、変形、補強、制限などで解決してくれというものだった。
ステータス詳細に影響の詳細が出るので、よくよく検討すれば解決が見えるようだ。
この時は、間接と骨格の強度上昇を指示した。見かけがすこしごつくなり、体重が増えることになる。
このままそのうちゲームの魔王の最終形態になっていくのだろうか。




