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英雄

 結局、墓地での出会いあたりからのロクザン翁との関係についてリンホー、ゴドルと共有することになった。シュベイヒも聞いていたが、魂のない彼が理解したかどうかは不明だ。一応口止めしておく。

「わかった。だが、村長には明かすなよ。あの人はお化けが苦手なのだ」

 ゴドルには少しあきれられたようだ。

「そのかわり必要ならわしが取り持つ」

 ありがたい。

「おかげで興味深い話を聞けましたぞ」

 リンホーはくすくす笑った。

「それはお互い様ですな。まさか、そんな術があるとは思いもよらず」

 また二人の間にしか通じない話をしている。

 リンホーに一つ二つ聞きたいことがある。

「なんで魂まで召喚してしまったのだろう」

「わが主君のしかけですな。敵の魔王に召喚された場合、敵の力を利用だけして自由意志をもって復活せよともうされました。あとは自由にしろとも」

「興味深い。そこな弟子よ、その時のことをなんでもよい、わしに教えておくれ」

 爺さん目を輝かせている。わかったわかった。その前に聞いておくことがある。

「では、あんたは俺の配下ではないというわけか」

 リンホーの去就だ。自由意志をもって俺の配下ではないということは、情報空間から失われているはずなのだが、今軽くあたったところまだ残っている。だからこれは確認だった。通常と違ってバグっていても困る。

「いえ、今のところは配下ですね。ただ、もし愛想をつかすようなことになれば離れることも可能かと」

 それは村人たちと同じ立ち位置ということか。確かにリストに彼はのっていて、忠誠心もある。比較的高いのが不思議だ。

「私は消えかけていました。あなたに修復していただけなければ召喚されても自分のことすらわからぬ呆けものになっていたでしょう。その点は恩義を感じます。なので、お力になれればと存じます」

 それは願ったりだ。彼を最初に呼んだのはそのためなのだから、そうしてくれないと困る。

「その点、よろしく頼みたい。正直、あんたの知識と知恵を借りたいと思っていたところだ」

「そうでしょうな。これよりはわが殿と呼ばせていただきます」

 彼はひざまずき、人間そっくりの作りの手を広げて自分の額にあてた。たぶん闇鬼式の忠誠の表明なのだろう。

「割り込むようですまんがちといいかの」

 一区切りついたとみたか、ロクザン翁が割り込んできた。リンホーだけじゃない、こっちも処理しないといけない。忙しい。

「師匠もわざわざすまない。もしかして、生身のほうはあまり時間はとれないのか」

「その通りじゃな。わしはこれでも侯爵領ではちょとした身分もちだ。不在が長引くとつまらん疑心暗鬼や噂を招く。用件をすませて戻りたい」

 その侯爵領の敵になるかもしれない、少なくとも敵視されそうなののところに来るのもどうかと思うが、この爺さんは自由人すぎるので気にしていないのだろう。

「用件というのは、そこの多分操ってる死体に持たせた荷物かい? 前に約束してくれた本かな」

「その通りじゃな。死霊術の文献と、魔法の初歩の教本じゃ。説明したいが、時間がない。次回は幽体でくるからそのときじっくりとな」

「わかった。ありがとう。大事に見させてもらうよ」

 用件はそれでおしまいのはずだ。

「もう一つある。まずいかもしれんぞ」

 まずい?

「何かあったのかい」

「侯爵のやつが英雄を呼んだそうだ。早ければ次の船でくる」

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