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目覚め

 目が覚めると、遺跡の書庫にもちこんだ簡易寝台の上だった。

 ゴドルが運んでくれたのだろうか。あの時、魔力を取られすぎて倒れたのは間違いない。なぜ吸われたのか。それだけ彼の召喚に必要だったのか。だが、気を失う前に始めて目にする闇鬼の姿はそこにあった。身体形成はおわっていたはずだ。そのくせ、自分の意志と無関係に濃密になにかをかきあつめる手ごたえは残っている。

 やばい。

 あれは小動物や鹿でやった魂形成の手ごたえを何倍も濃密にしたものだった。そのつもりはなかったのに、なぜそんなことが起こったのか。

 今、リンホーはどうしている。どうなっている?

 ここは地下なので、夜があけたかどうかはわからないが、しんと降りてくる空気の冷ややかさにまだあけてないと感じる。だが、完全に静まり返っているわけではないようだ。

 この書庫のある区画も昼間は営繕の音がする。小鬼の若い職人がいつでも使えるように補修を行っているからだ。その槌音ならわかるが、かすかに聞こえるのは話声。使われてない居住区のどこかで誰かが会談しているようだ。

 枕元におかれた水差しの水をあおってから、俺はそっちにむかった。

 ある意味、思いがけない面子がそこに集っていた。

 情報空間でみたまんまの男の闇鬼が一人。リンホーだ。どこからもってきたのか、足元に温かい光をはなつランタンをおき、毛皮を優雅にまきつけ、手に盃もってくつろいでいる。彼が貴族出身だというのはそれだけで納得ができた。

 彼と話をしているのは人間の老人。こちらもなかなか優雅な仕立てのよいスーツ姿。顔を見ればわかるが、これはロクザン翁だ。実体できたらしい。肩のところに邪妖精の一人がつまらなそうにあくびをしているが、これは実体じゃないので他に見えているのかは不明。

 そして彼らから距離をとって見ているのが兵士シュベイヒとゴドル。警戒心を隠す気がない。彼らと反対側に距離をとって、何か箱を背負ってぺたんと尻もちついているのは生きた人間とは思えなかった。

 まず、全身にあんなにピンをさして平気でいられるわけがない。肌の色もなんだかよくないし、顔はなぜかお面をかぶして隠している。人間の男のようだが、着衣は魔物の王の人狩部隊と同じ黒い毛皮。

「おお、お目覚めか」

 俺の登場に嬉しそうに反応したのはロクザン翁だった。

「早速で悪いが、わしの身分を保証してくれ」

「どういう状況? 」

 俺が倒れたあと、状況はどたばたになったらしい。

 まず、立ち合いのゴドルとリンホーで会話が起きた。それから二人で俺を運ぼうとしたのだけど、そこにロクザン翁を連行したシュベイヒが登場した。爺さんは邪妖精に俺への伝言を頼んで先ぶれとしたはずだったんだが、タイミングが悪く、邪妖精は俺が気絶してようと寝てようと関係なく言いっぱなしだったので全員でびっくりすることになった。

 まあ、そんな感じだ。そして俺が目覚めるのを関係者で待っていた、というわけ。

 ロクザン翁とゴドルの間でよく言葉が通じたな、と思ったがロクザン翁に言わせると、小鬼の言葉は闇鬼の古い言葉で人間の国にも知っているものがいたそうだ。ただ、普通に習ったかどうかはちょっとこわくて聞けない。

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