魂の復元
「ふむ! 」
ロクザン翁は満足そうにうなずいた。
「思った通りじゃ。いくつか質問よいか」
質問というのは、召喚のときには物理的有機物を材料に体を形成するが、魂のときは何を材料にしていると思うか、というものだった。
召喚済の体は突破可能だが保護されているし、それを突破すると台無しになる。そうしないようにした場合、周辺にあった見えない何かをかき集めた感じがある。
それが何かわからない、俺は正直にこのあいまいな手ごたえについて説明した。
「それよ。まさにそれ」
ロクザン翁はしきりにうなずいた。
「それは魂だったものの残滓。それをかき集めて型、つまり体にあわせて成形してやるのが魂の作成じゃ。この残滓は元の生き物の特質や、周辺の環境の影響を残しておっての、ゆえに魂を復活させても人がかわることがあるという次第じゃ。そのもののもっとも親和性の高い側面をなぞるのよ。魔王というのはよくできておるわ。神の御業かのう」
俺の場合、駄女神の御業だけどな。
「その魂の残滓とやらはどこにでも転がっているのか」
「質はもうした通り差があるな。濃度も濃淡あるが、まあだいたいあるよ」
「体を作らず、魂だけ作ることは可能? 」
「わしの助手どもはどうやって生み出したと思うね。幽霊を捕まえれば可能じゃよ」
ということは、魂の残滓があればどこでも作成できるのか。
「いろいろやってみるつもりのようだが、いきなり人間、亜人はやめておけ」
師匠は師匠らしいことをいいだした。
「小さい生き物から、順に大きく複雑なものに移行してみるのだ。もしかすると、まだ限界があるかもしれんからな」
それはまったくそうだ。人間で失敗したらどうなるかは俺は知らない。
そのときどうなるかは、「失敗しない」ロクザン翁も知らなかった。
結果を楽しみにしている、とそういって彼はいそいそ戻っていった。
「次には死霊術の基礎のほかに魔法の入門書ももってこよう。楽しみにしておれ」
捨て台詞だったが、俺としてはわくわくするのを押さえられなかった。魔法だと? 小鬼も樫鬼も魔法は使わない。とりこんだ人間も魔法を使えるやつはいなかった。だが、魔法はあるらしい。
それから俺は魂付与の実験も行った。魔力の消費が思ったよりあるので、一日一種類、だんだんに大きな生き物で試すことが数日続いた。といっても鹿までが限界で、熊や猪など自由にすると危なくて仕方ないからやめておこう。人間で試すのもやめておいた。自由意志をもった人間をうかつに解き放つとろくなことにならないと思う。
その代わり、情報空間に魂の材料はないか実験をしてみた。
結論として、情報空間に魂の残滓はないが、発見はあった。
情報そのものが材料となり、時間がたちすぎて曖昧になった幽霊の情報を整頓することが可能ということだ。結果、樫鬼の老齢の幽霊を霊的に若返らせることができた。彼は廃村の長老で村が襲われたときにはだいぶぼけていて、わけもわからず殺された恍惚の人だった。その霊的存在を整頓することで、おそらく復元しきれなかったものもあったと思うが本人は若返って樫鬼の知識と経験の宝庫が開かれた。彼を今後どうするかはダラと相談して決めよう。今は彼女が村長だ。
そして、この整頓をする価値のあるものたちがいた。
旧魔王の四天王とおぼしき四人だ。




