新たな召喚者
偵察の結果、人狩り部隊の補充はまだされていないことがわかった。
といって送り込んだ小動物たちが無傷だったわけではない。あそこの主だった蜘蛛の記憶もさぐってわかったのだが、魔物の王の分身であるこの蜘蛛もまた産卵で自分の分身を生むことができて、その小蜘蛛たちに人狩り部隊の基地を守らせていたのだ。蜘蛛の記憶にある彼らは四匹。大きさは犬くらいで小蜘蛛とはいえない大きさになっていた。母親である蜘蛛の指定した者以外が入ってくると糸と毒でしとめ、食ってしまう。
母蜘蛛は魔物の王の配下だったが、彼らはそうではないらしく、狩られた小動物たちは情報空間から消え去ることはなかった。
俺の配下でもなく、魔物の王の配下でもない彼らは、母蜘蛛の命令をただ忠実にこなしているだけのようだ。驚いたことに、海の上にぶらさがって網をおろして魚なども取っているらしい。
彼らのことはしばらくほうっておくことにした。
蜘蛛の糸で要塞化して手持ちの戦力での攻略が難しく、魔物の王に属していないなら様子見だけでいいだろうと思ったからだ。
それより、蜘蛛の特性のほうが気になった。
追加の召喚者二名の一人を蜘蛛にしたのはそれが動機だ。彼女に配下を生み育てさせれば、戦力になる。どこで、というのはもう一人の召喚者の知識に任せることにした。
もう一人はダラの夫のグイだった。戦士としてはダイに一歩も二歩も譲るが、わな猟師としては優秀で、経験豊富な森番。他の選択肢もあったが、ダラの意志を尊重した。
「魂がないから当分は言われるままの意志なしだが、そのうちロクザン師匠に魂いれてもらおうと思う」
彼女らに何をやってもらうかといえば、廃村が失った森の管理をより奥まったところでやってもらい、蜘蛛軍団の育成と廃村の再建の最初のきっかけにしたいというものだった。
3レベルになると、無魂だが鹿も小動物枠で召喚できるようになる。蜘蛛とグイと鹿をダラの指揮下にいれて環境を回復しながら、戦力を整えてもらうことにした。
召喚したもののうち三人を手元から離すことになるが、これはダラの意見を反映したものだ。
まあ、何かというと集落の樫鬼たちに口説かれるようになって面倒だったのと、口説かれてしまうと俺の約束が果たされたときに彼女の居場所がなくなるのとがいやだったのだ。
俺としてもこの先誰でも彼でも手元にとどめて面倒は見れない。様子を見ながら、必要なら助ける、そんなことができるようにならないとだめだろう。
蜘蛛の外見は不気味だったが、ダラはあまり気にしていなかった。蜘蛛は知能が高く、樫鬼、小鬼、人間の言葉を話すことができたのでコミュニケーションに困らないのもよかった。
ダラは彼女と仲良くできるといいなと思っているが、こればかりはなんとも言えない。
そこまで手を打ってから、村の者で帰りたいものは村に帰ることを許した。
「ただし、村の外に行くときは単独行動は禁止だ。人間でも蜘蛛でも見かけたらすぐ逃げてくること」
つけた条件はこれだけだった。村人は少しだけ忠誠心を上昇させたようだ。
それからしばらくは、魔王の記録を読みふけり、配下の動向を確認し、彼らが狩った獲物のいわば経験値が入ってくるのを確かめる日々が続いた。




