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遺跡

 森の中の寺院は苔むし、植物の根にからまれてひびわれながらもその威容を保っていた。偵察小鳥で見たときには気づかなかったが、可能な限り大きな石材で組み立てられているので、あまり崩れてはいない。少しかがんでくぐらないとはいれない入口をくぐると、すきまから差し込む光で慣れれば見える程度には明るい。

 どうやらこの寺院は巨大な岩盤の上にたっているらしく、寺院中央のホールは少し掘り下げられ、丈夫そうな岩肌の巨大な穴があいていた。その穴の周縁には掌の長さ位の溝が掘ってあって、奥に岩を刻ん作った水槽につながっている。ちょろちょろと水が流れてその水槽に流れ込んでいるが、水はどうも岩盤を覆う土の下からしみだしているようだ。

 水槽から穴の下に向けて竹かなにか中空の管が伸びている。小さな道具小屋が奥に建ててあるのはこの設備のためのものをしまってあるのだろう。

「浄水設備か」

「さよう」

 勘定方のゴドルがうなずいた。

「少し見てゆかれるか? 説明いたそう」

 この水槽は濾過槽らしい。集まってきた水を濾過し、穴の底のシェルターの生活用水に用いているそうだ。水は岩盤の表面を広くゆるいすり鉢状に削って集まるようにしているそうで、その広さがどれほどかはわからない。

 濾過槽にはゴミがたまるので、避難してきたときにはつまってあふれていたのを掃除し、外れていた下の配管を直すところから始めなければいけなかったそうだ。

 説明を受けている間に村の者たちは先にいってしまった。ゴドルと俺、一緒にふんふんきいていたダラ、それから警戒態勢で待機していた兵士だけで穴の内壁に刻まれた螺旋階段をおりていく。

 この階段は幅1メートルほど、高さは2メートルはある溝で、穴の内側には手すりもなにもつけていないので怖いことこの上ない。ところどころ、支柱のように掘り残した部分があるので、落ちそうになったらそこにつかまれることを祈ることになるだろう。足元はすり減ったゆるい段になっている。

 怖いのは濾過槽の下、樋を内側にみる場所で、水がこぼれていた関係で苔でぬるぬるしてるし、まだ少し漏水があるらしく湿っている。慎重に足を運ばないとすべりそうだ。そこにはぼろぼろになった手すりの名残があった。芯まで錆びてもう手すりとしては役に立ちそうもない。以前はこういう金属の手すりを巡らせてあったようだが、なぜなくなったのか。

「ここの手すり、もしかして村のほうで加工してしまったのか」

「そのようです。わしの生まれる前の話ですがな」

 階段には横穴がところどころ空いていて、中は暗い部屋になっていた。入口は幅1メートル、小部屋自体は暗くてわかりにくいが2メートル四方のようだ。最初の部屋にたいまつと細工物の着火具がおいてあるほかはほとんど底につくまで何も置かれていない。なんのために作った部屋なのだろう。

 穴の底まで五十メートルは降りたと思う。中央には上で濾過した水をためた溜池があり、四方に一つづつあいた幅も高さも3メートルはある大きな通路の中央に刻まれた排水溝にあふれた水がちょろちょろ流れ込んでいた。この溜池は水汲み場であり、流れ出すところは洗濯に使っているのだという。

 通路は一本をのぞいて真っ暗で、暗くない通路には壁にたいまつがささっている。十メートルも進まないくらいに二階建てくらいの家屋が両側に並んでいる。奥のほうは真っ暗でどこまで広がっているかわからない。

 かなり大規模な遺跡だ。

「ようこそ、小鬼の隠れ里へ。よろしければ墓地と魔王の座までご案内いたしますが、先にご休憩なさいますか」

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